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呪術sslog

七海健人/
あ、これ気持ち悪い。緑色にかびた煎餅みたいな体に、無駄にひょろ長い手足が対角線にのきにょきと生えていて、辺りを腐った牛乳のような臭気をまき散らしている。まるでチャームポイントのようにボクサーパンツを履いているのが、一番堪えた。電話を握りしめながら、通話相手に懇願するように言った。「私、呪術師は向いていないと思います」「仕事をしてください」



五条悟/
第一印象は胡散臭い男だった。話を聞いてそれは確実なものになっていた。リビングに転がした達磨を指でつつく男――五条悟は、青い両目を細めてニコニコと笑っていた。
「何を考えてるの?」
「あなたの事」
「エ、うれし」
「別に余計なことをいうもんじゃないなと思っただけです」
空を切り取ったみたいですね、と言ったのが運の付きだったと、自分を慰めているだけだ。



五条悟/
――男の人は嫌い。とても嫌い。大嫌い。
豚の姿になったマルコはかっこいいと思うけど、トトロの方が好き。ずんぐりむっくりのもふもふしてるもの。
「そんなこといってもね」と黒々とした髪の端を指でいじりながら、義姉は笑った。
諦めているような、純情な少女時代が自分にもあったのだというような、歯を見せない笑い方だった。
「そんな男、居ないわよ」
「わかってる、わかってるもの……」
「マア、悪い人ではないのよ。あなたの、旦那様になるお方は」
「悪い人だわ、とんでもない男だって、お姉さまも仰った」
「そんなこといったかしら」
「言いました」
「言ったのね。私ったらバカだから、忘れちゃったわ」
「嘘つき」
じろりとにらみつける。義姉は蛇のように笑って受け流した。
「すぐに結婚しろというわけではないのだから、あなたは恵まれているのよ」
「どこが」
「相手がとんでもない馬鹿ってこと」
「お姉さまより?」
「女より」
「ふうん」
まだ義姉と笑っておしゃべりのできた十六の夜だった。



五条悟/
「男はエラくなるほど心の片隅にマゾヒズムが燻って静かに肥大していくんですって」「そんな訳があるかよ」
……。
「でも、悟ってときどきバカが付くぐらい変態だよね」
「おい、どこを見てそう判断したんだよ」



虎杖悠仁/
「ドイツの正式名称って"ドイツ連邦共和国"なんだって」
「なにそれ、全然知らなかった」
「日本はドイツで伝わるし」
「ああ、メイドインドイツ」
「そんなに見かけないけどな」

「てかこないだいメイドインインドなら見かけたんだけど」
「逆にそれなんだよ」
「すげえべたべたしたガムみたいな菓子」
「どんなのだよ」
「なんかね、やべえの。薄荷みたいな味した」
「語彙力やばすぎだろ」
「もう語彙力がベタベタに吸い寄せられる感じでヤバかった」
「ふうん、こいつくらい?」
「あっそうそう。こんな感じでなんかヤバかった」
「結局やばいしかいってねえじゃん」
「言ってねえね」

202209/12

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