「オオッあれはっ、あれはもしやスカイツリー!!?」
「いや、あれは普通の鉄塔だね」
 東京に来てはしゃぐ田中と西谷に対して冷静に間違いを訂正したのは、音駒の副主将である海君。そして、その横でお腹を抱えて笑っているのは同じく音駒の主将である黒尾だった。
 ホテルから電車とバスを乗り継いで数十分。校門前にてバスでやってきた烏野メンバーを出迎えたところに、私も丁度合流した。
「おはよう潔子」
「おはよ。なんか、久しぶりな気がするね」
「櫻井先輩!十日間お疲れ様でした!」
「仁花ちゃんもおはよ。少しは慣れた?」
 仁花ちゃんは照れたように笑った。慣れないことも多いだろうに、毎日潔子に色々教えてもらっているらしい。学ぶことが多いと言っている割に疲れている様子はないので、それなりに楽しんでやっているみたいだ。
「ていうかオイ、なんか人足んなくねーか?」
「実は……」
 元から大人数というわけでもないけれど、結局日向と影山は赤点を取ってしまったらしく補習があるのだと。今回の遠征は不参加なのかと思ったけれど、田中が言うにはお姉さんが車で送ってくれるらしい。
 私も後でテストの答案を武田先生に貰わなければいけないけれど、合宿中連絡が来なかったということは大丈夫だったのだろう。
「うおおお!!?」
 突然の叫び声でそちらに顔を向けると、こちらを見て悶絶している山本君。膝をついている彼に田中はどこか満足げに仁花ちゃんを自慢していた。田中が特別どうかしたとかではないというのに。
「じゃあ、準備できたらすぐ体育館行くぞ。
 もう他の連中も集まって来てる」
「…おう」
 荷物を指定された教室に置きに行こうとしていると、繋心さんに声をかけられた。
「律、お前も一応練習着着とけ」
「え、………いいの?」
「本格的な練習は無理かもしれんが、一応な」
「わかった」
 タオルとスクイズボトルに加えてサポーターを袋に纏めた。
 練習できるのならそれに越したことはないけれど、みんなの練習の邪魔にはなりたくない。それでも、繋心さんがそう言ってくれるのなら。そう思いつつトレーニングメニューの書かれたプリントを折りたたんでポケットに入れた。
「律、いつものシューズじゃないね」
「かっこいいですね!」
「ありがと」
 マネージャーをする時に履いていたシューズとは違う本格的なシューズに目を落とす。黒地に青いラインが入ったシューズは、昔私が愛用していた物の新しいヤツだ。
「、よし」
 体育館に入って靴紐を結ぶとスイッチが切り替わったように思考がクリアになった。
 合宿中はアップをとった後はひたすら試合をやるとのことで、負けたらペナルティあり。合宿前にチームの改善点を書いた紙を繋心さんには渡してあるけれど、強豪ひしめく中で負けっぱなし。他校の子とマネージャー業をしつつ試合に目をやった。
「櫻井さんて、選手もしてるんだっけ?」
 ドリンクの入った籠を一緒に運んでいた梟谷の雀田さんに話しかけられた。梟谷のマネージャーは二人で、どちらも同学年だと聞いた。
「元々中学の頃まで選手で、色々あって最近復帰した」
「そうなんだ……なんか、試合を見る目が木兎に似てたから」
 私のこと、かおりでいいよ〜と言った彼女は、アイツが木兎。と梟谷の選手を指さした。
 身長も高くがっしりしていて、灰色の髪の明るい子。彼が、全国でも五本指に入るスパイカーの木兎光太郎かと目をやる。
「あ、別に深い意味は無いんだよ?何となく、ギラギラしてるなって」
「ギラギラ………?」
 視線のことか。少し前までとは違う私になったということなのかとまた実感した。ギラギラっていうのがわからないけれど、試合に出たいってまた顔に出ていたのかな。合宿の時、梓さんにも熱が入ったと言われたけれど、わかるものなのだろうか。一時期は触れることさえもできなかったのに、マネージャーになって華とも和解して。沢山のいい変化に流される。
「いつだって、出たいと思ってる」
「?」
「試合。できなかったときの分まで出たいし、追いつきたい。
 ペナルティだって、強くなるためなら何だってできる」
 私の発言にかおりはギョッとして、それでも静かにコートに目を移した。
「そんなヤツら支えるのが私たちだからね。
 律だって、遠慮しなくたっていいから!」
「!」
「……でも、ペナルティだって何だってできるは言い過ぎじゃない?ひょっとして、マゾ?」
「マゾじゃない。でも……痛いのは嫌だけど、キツいのも苦しいのも嫌いじゃない」
「それはマゾでは??」
 また烏野の負けで終わった試合に、ペナルティを終えた選手にボトルを渡しに行く。そんな時、体育館の扉が開いた。見たことは無いがどことなく顔が田中に似ている女性と一緒に来たのは日向と影山だった。
 
 二人が来てからは勝てていたものの、試合を何度も繰り返していると周りが速攻に慣れてくる。
 結局、今日は私が試合に出ることはなかった。準備損ということはないけれど、シューズを履いていた意味を問われると何とも言えなくなる。最後の生川高校と音駒高校の試合が終わると、コート整備をすることになった。
「黒尾。この後って自主練していいの?」
「まぁ……でも今日は初日だしやめとけ」
「…うん、わかった」
「………」
 選手だけど、今このチームにいる私はマネージャーだ。勝つために鍛えに来たこの合宿で、私は何ができるだろう。

 合宿二日目。
 昨日と同じ様に試合を繰り返している様子を見ている中で、日向が音駒の灰羽君の事を意識していることが少し気になった。この合宿では今まで烏野に足りなかった試合経験を積むことが出来る。他校の選手と交流を深めて共に高め合うことはとてもいいことだと思う。だけど………
「どうしたの?律ちゃん」
「英里……」
 話しかけてきたのは、生川のマネージャーである宮ノ下英里。彼女は皺寄ってたよと眉間を指差した。昨夜。マネージャーが使っている教室では、布団を敷いてから恋バナや選手、学校のことを話し仲良くなっていた。梟谷の二人と英里は同級生で、森然の大滝真子は二年生だと聞いた。
「なんか、烏野ピリピリしてるね」
「なんか………わかってない」
「?」
 疑問符を浮かべる英里を横目に、コートに視線を移す。
「インターハイ予選で負けて、わざわざ県外の合宿に来たのに、何も変わらないところに苛つくのかな……折角の機会なのに、勿体ないって」
 ユースに行ったからこそできる思考なのかわからないけど。こんな機会滅多にない。せっかく東京まで遠征に来たというのに、やってることも今までと対して変わらないのが勿体ない。
 自分に足りないものは何なのか常に考えて、新しいことを迷わずに取り入れる。そういう気配が、全く無い。
「……ほんと、選手より選手みたいだね。言ったらいいのに」
 それもそうだけれど、なるべく選手自身で気づいて欲しい。どうやったらサーブがうまくいくとか、スパイクの打ち分けはとかは自分ではなかなか確認もできないし、技術的なことは指導しないといけないかもしれない。それでも、こう言った精神的なことはあまり強要もしたくない。
 そのまま試合を見ていると、東峰へ繋いだトスを日向が打とうとしていた。
「!」
 接触したものの、東峰は気づいていたみたいで、大きな怪我には繋がらなかった。
「なぁ影山ぎゅん!の方の速攻、おれ目ぇ瞑んのやめる」
 影山に話しかける日向の言葉に頬を緩めると、英里に向き合った。
「心配、いらなかったかもしれない」
「そう?ならいいけど、心臓に悪い……」
「怪我につながることだけは辞めさせないといけない」
 日向も東峰もチームに必要不可欠な選手だ。私みたいになって欲しくない。そもそも今の烏野は決して強豪と呼べるわけでもなく、部員の層も薄い。
 烏野と音駒の試合が終わると、ボトルとタオルを配りつつも他のチームの様子を見ていた。そんな時、外で影山と日向と菅原が話す声が聞こえてきた。そこでは、日向が言っていた速攻の話と、それを否定する影山の声が聞こえる。
『空中での最後の一瞬まで、自分で戦いたい』と主張する日向に対して、影山はバッサリとその意見を反対した。
「あの速攻に、お前の意思は必要ない」
「ごめん日向。俺も…今影山の意見聞いてたら、今回は影山の言う事が正しいと思ったよ。
 あの速攻は十分凄い。あれを軸に他の攻撃を磨いて行くのがベストだと思う」
「あー……俺も菅原派だな。
 『自分で戦いたい』って言っても変人速攻はほんの一瞬勝負。あの一瞬を空中でどうこうしようってのも正直難しい話だと思うぜ」
 冷淡な三人の声に、私の中の大丈夫はヒビを入れた。
「………」
「うおっ!櫻井、凄い顔してんぞ」
「……どんな顔?」
 試合を終えた黒尾にボトルを渡しながら聞くと、「目、据わってる」と笑われた。黒尾はドリンクを流し込みながら、先程の会話が聞こえていたのか真剣な顔つきで言った。
「何か、烏野ギクシャクしてんな」
「……好きなら、大切なら困らせろとは言うけど、いざ口出しするとしたら悩むものね」
 若利も黒尾も梓さんも、こんな気持ちだったのだろうか。
 私をバレーに引き戻すことに、どれだけの人がどれだけ躊躇していたのだろう。華と話して、余計にそう思った。
「、櫻井」
「何?」
 黒尾はあー……と少し悩んだようにタオルで汗を拭きながら顔を隠した。
「………また、何かあったら言えよ」
「うん」
 何かあったらって。黒尾には迷惑掛けっぱなしになるね。
 今日の練習は、結局最後まで日向は出してもらうことはなく終わった。その様子に何とも言えなくて。それでも、やっぱりこのままだというのも嫌だからコート整備に入る前に私は影山と繋心さんに声をかける。
「ちょこっとだけ、練習したいんだけどいい?」
「、あんま時間はねぇぞ?」
「大丈夫、見てもらうだけだから」
 少しその場で跳ねて、屈伸をする。
「何をするんですか?」
「左打ち。やりたいから付き合って。影山上げたことある?」
「、は。ありますけど………櫻井さんが、左!?」
「じゃあよろしく。繋心さんはフォーム見て、気づいたことがあれば教えて」
 ユース合宿の時話していた事。怪我が再発してしまえば、次は確実に選手生命を絶たれる。肩の故障で右で打つ回数も減り、膝の故障で何度も飛ぶことができない。それならどうすればいいのか、私はどうするべきか。
 合宿の時コーチに基本の打ち方、注意する点を教えてもらい|左打ちの凄い選手《うしじまわかとし》をイメージして少しずつ練習を進め、大分形になってきた。
「何?櫻井、今から何すんの」
「練習。黒尾達はそんな見てないで休んで」
「注目してたらやりづらい?」
「いや、そういうわけじゃないけれど……」
 さっきまでずっと試合を繰り返していたのに、その集中力はどれだけ途切れないのだろう。
 ボール出しを菅原に頼んで少し屈伸をすると、反対側に西谷が入ってきた。積極的に練習に参加しようとする姿勢は好きだし、こちらとしてもありがたい。レシーブが上手な人が入ってくれる方がやる気も上がる。
 ボールを少し集めてコートを片付けないでいると、自然に注目が集まってきた。
「………それじゃ、やろうか。菅原」
「行くぞ影山」
 菅原が投げたボールを影山が昔と同じような滑らかな手つきでトスを上げる。私はそれに合わせて思いっきり手を振り切った。ボールは勢いを増して西谷の元へと進む。
「ッ!!」
 上がったボールは横にそれて、人が集まってる方へと飛んだ。その様子に、まだ調整が必要だと頭を回す。
「影山、もう少し高くていい」
「はい」
 繋心さんに意見をもらいつつフォームを調整する。
 少ない本数でもキッチリ上げてくれるので、徐々に昔の感覚が戻ってくる。影山に上げてもらうのは久しぶりだったけれど、手にピッタリと張り付くようなボールの感触に寸分の狂いもない精密なトス。本当に彼は天才だと実感する。
 反対側に入った人を順番に狙いつつ、十本前後決めたところで隣の試合が終了したホイッスルと同時に辞めた。
「ありがとう、影山。繋心さんも菅原も」
「フォームも割と安定してたし、いけるんじゃねぇか?」
「合宿中、こんなことしてたのか…!」
 三者三様、それぞれの反応に応えて、目を伏せた。
「………私、今から酷いこと言うけど」
 大切だから困らせろとはいえ、やっぱり勇気がいるものなんだろうな。私が今から言うことで、部内に亀裂が入るかもしれない。烏野の良さを殺してしまうかもしれない。それでも、私はセッターに蔑ろにされているスパイカーを見ていられない。

「私が新しいことしたいって、強くなることを考えてしたことには付き合ってくれるのに、日向の意見は正論で叩きのめして満足?」
 私の言葉に反応した影山はどう言うことだと寄る。
「確かに三人の言ってることは間違ってないと思う。今の烏野には、今から何か新しいことを始めて武器として磨くには時間も技術も足りないかもしれない。でもさ、それで何になるの?
 菅原、言ったよね?他の攻撃を磨くって、今の烏野の一番の武器が日向と影山の速攻ってわかった上で言ってる?
 繋心さんも、セッターだったもんね、わからないよね。
 お前らさ、スパイカーのことなんだと思ってるの?」
 ああ、ダメだな。バレーに関しては口が悪いって、よく岩泉に言われていたことを思い出した。三人で練習をする時、容赦なくアドバイスをしてたけれど、そこでかなり及川と言い合ったと言うのに。
「理論で考えて、日向の意思を掬ってあげない。
 無理だって背を向けて、どうして平気でいられるの?日向は現状に満足していないから話したんじゃない。今のままではダメだって思ったから行動したんじゃない。
 新しい事を始める事が全て大切だとは言わないけれど、本当にこのままでいいと思ってる?」
 攻撃に日向の意思は必要ないと影山は言った。それなら何。ただ目の前に来るボールを打ち返してればいいと言うの?私達《スパイカー》は、ロボットでも何でも無いぞ。
 ギンッと影山を鋭く睨むと、少し怯んだことがわかった。
「おい律」と澤村が制すように肩を掴むが、私はそれを払い除ける。
「セッターにとってスパイカーって、何?ただの道具なの?」
「日向には技術が無いんですよ!?そんな簡単に「いくら影山が天才セッターだからって、攻撃の主導権はスパイカーよ。
 また、そうやって自己完結してスパイカーの意見を否定して日向を殻に閉じ込めようとするなんて、独裁的な王様に逆戻りするだけ」
「!」
「今の影山は、理論でものを言ってチームプレイを否定してる。
 個人でどうにかしようとしてる」
「俺達は今やるべき事があるんですよ!?そんな本番で使えるかわからない速攻の練習したって、時間かかるだけで無駄じゃないですか!!」
「はっ………今持っている技術を磨くだけで青城、白鳥沢に勝てると思っているなんて、甘いんじゃない?
 無駄かどうかなんて、終わってから判断しろよ。
 できないことを出来るようにするための練習だろ!?」
 私は影山の胸ぐらを掴んで、引き寄せた。
 他のチームの人も、尋常じゃない様子に目を見張ってるのがわかる。それだけ、腹が立ったのだ。
 それだけ、悲しかったのだ。日向は何処か私に似ている所があると思っていたから、余計に。
 運動神経はあっても、何もできない。上を目指しながら必死にもがくことしかできない自分に重なる。
「アンタが、今まで私や及川にバレーについて聞いてきたのは何のため?上手くなりたいからなんじゃないの?勝ちたいからなんじゃないの?
 勝ちたい意思で、できることを増やそうとした日向の意見は無視?それならアンタは、これから一生日向にトスを上げる事ができるの?自分が上げたボールだけ打ってろって言うの?
 日向は、アンタをライバルとして見てると思ってた。それはアンタもだと私は思ってたんだけど、どうやら違ったみたい。
 こうしろ、ああしろって、金田一君と国見君に押し付けたみたいに日向にも押し付けるの?
 影山は、これから数年先の日向のバレー人生を背負える?」
「……は?」
 
「したい事をさせない。可能性を潰すって、そういう事だよ」
 
 わからないのも無理はない。でも、私がそばにいて見過ごすわけにはいかない。華の思いを、知っているから。
 そこで私は影山から手を離して繋心さんと菅原を見た。
 この三人は間違っていないと、自分なりに正しい回答を出してそれを日向にも理解してほしいと思っていることはわかる。
「私は日向に賛成。
 技術を磨くことは確かに大切なことだけど、たったそれだけじゃ上には行けない。時間を気にして守りに入るなんて、随分とビビリになったもんだね」

 ねぇ、強くなるために来たんじゃなかったっけ?
 いつまで現在に止まっているつもりだ。
 今話しているのは、未来の話だぞ。

    *    *    *

 烏野のマネージャー兼ユース選手である櫻井さんの言葉に、私はうなづいた。
「どうしました?猫又監督」
「いや?負けを払拭しきれているのは、案外あのマネージャーだけなのかもしれないね」
 嫌われてでもチームを引っ張ろうとする姿勢、目の前の課題を叩きつけるかのような言葉遣いは見ているだけで震えた。
「……彼女が試合をしているところを見たことは無いけれど、烏養のジジイや黒尾が気にいる理由もわかる」
 過去と現在から未来の可能性を考えて、今できる最善をと行動する。その迷いの無さ、新しいことへ躊躇いなく挑戦する姿勢が烏養の弟子だと言うことを物語っている気がした。
 俺は彼女のことを全く知らないが、それでもどこか他人ではないのだと。真っ直ぐに前を向いてひたすら進み続ける姿が彼に重なる。
 
 それに、あれだけ真っすぐな目で言われると、確かに反論も出来ねぇよな。

    *    *    *

「櫻井でも、言う時は言うんだな」
 コート整備も終わり、バスに乗り込む準備をする中で黒尾に話しかけられた。
 あの後『冷静になれ』と澤村に間に入られたから三人と目を合わせることはなかったけれど、みんなの前で言いすぎたかもしれない。でも、言ったことに後悔は無かった。周りの視線が気にならないわけでは無いけれど、それで自分の意見を曲げる気もなかったから。
「引いた?」
「全然。寧ろ、それが櫻井なんだなって」
 黒尾は少し笑いながら優しげな表情で言った。
「驚きはしたけど、引いたとかは全然無ぇよ。寧ろ、あそこまで言ってくれる奴がいて羨ましいくらいだ」
「そう」
 わかってくれる人ならちゃんといる。大丈夫。みんなだって前に進んでくれる。そう信じることが出来た。
 誰が悪いとか何が悪いとかじゃなくて、間違ってないと思うことをぶつけ合う。それでお互い傷ついて、その分強くなっていく。困らせて、喧嘩して。そうやって強くなっていくんだ。
「……電話で、櫻井と同じ学校だったらって言ったじゃん?」
「うん」
「今でもそう思う。俺の隣に櫻井が居てくれたらって…一緒にいたいって、いつでも思ってる。
 
 ……俺、櫻井こと好きだ」

 突然の黒尾の言葉に、思わず目を見開いて見つめる。
 あやふやに誤魔化すことも解らないフリをする私でも無い。
「黒尾、まって、私」
「櫻井の中に誰かがいるって知ってる。…オイカワ、だっけ?電話で聞いたから。その上で聞くけど、なぁ、俺じゃダメか?
 ずっと憧れだった。けど、お前と会って……」

 黒尾はいつもの飄々とした顔を隠して、真剣に言った。

「俺、櫻井のこと本気で好きだ」



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