「え、俺の写真?」
 インターハイ予選が間近に迫った頃。休み時間に話しかけてきたのは同じクラスで写真部の女の子だった。
 身長は低くもなく高くもなく、髪は黒のショートカット。少しだけメイクが施された顔は少し大人びていて、まあまあ美人。
 ………こうして人の容姿をじっくり観察するのは、実際俺の容姿が整っているから、癖みたいなものだ。別に、それで自分がどう思っているかとかはない。
「うん、次のコンクール出していいかなって」
 そう言いながら彼女が渡してきたB4サイズの写真にはボールを構えた俺が写っていた。いつ撮ったのかを聞くとこの前の練習を見にきていたのだと。
 青城の体育館は練習中だって人の出入りが激しく、ギャラリーには練習風景を見にくる子が多い。
 基本女の子は俺目当てなんだけど、中学時代はこういうことが全くなかったから新鮮だ。体育館丸々一つを俺達男子バレー部が使用しており、ネットに遮られた反対側では女子バレー部が練習している、ということもない。だから体育館のことはよく知っているし、この位置だとエンドラインより少し後ろだと思うからサーブを打つ時の顔だ。
「俺こんな顔してるんだ………」
 ふうん。と写真をまじまじと眺める。
 外見がいいという事に今更どうとも思わないし、毎日見ている顔だ。でも、その写真に写るこの顔は、律ちゃんを思い浮かべている俺の顔だ。
 俺がサーブを上げる時は、いつも手本にしていた律ちゃんを思い出している。律ちゃんならどこを狙うか、サーブトスの力の入れ具合は?助走は?なんて。

『違う。まだ上体曲がってる』
『まだ!?まだってどのくらい!?』
『及川タッパあるんだからもっと腕伸ばせるし、高さがあるって事は角度もあるって事なんだから姿勢正して。それから…』
『んあぁぁぁ!!色々いっぺんに言わないでよバカ!!』
『バカって何、バカって』
『おい二人とも一旦落ち着け』
『だって櫻井さんが!!』
『………』
『何か言ってよこの〜!!』
『そんなに私の事嫌いなら教わらなくても』
『そうは言ってないでしょ!?寧ろ逆だし!
 俺、櫻井さんのバレー好きだし!!』
『え、』
『……へぇ?』
『、!?今の無し!!』
『無しなの?』
『っ………それも無し、って岩ちゃん笑わないでよ!!』

 毎日のように練習して身につけた自分の武器だ。通用すると自信を持って言えるし、今までそうしてチームを勝利に導いてきた。自分の力で点をもぎ取って、それが勝利に繋がる。それを最初に教えてくれたのは、律ちゃんだ。
 昔と呼べるほど時間も経っていないはずなのに、なんとなく懐かしい気分になって、見つめたままだった写真を返した。
「良いよ」
「ほんと?ありがと」
「うん、こちらこそ」
 やっと見つけたんだ。もう逃しはしない。
 この前の烏野との練習試合で久しぶりに出会った彼女の顔を思い出した。

 その写真がコンクールで入賞し、カメラを持って観覧する子が増えてしまったのは悪かったと思ってる。それでまた岩ちゃんにどつかれたのも別の話。



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