大学練が始まる前日。私はキャリーケースとエナメルバックを手に学生寮へ来ていた。
 進学先はバレー部の強豪校なので都外からの進学者も多く、学生寮が学校付近にある。私も今日からそこで生活するけれど、人と関わり合うのが苦手なので不安が大きい。
「律、久しぶり」
「梓さん」
 待ってたよ、さあ行くぞ。と梓さんに急かされて寮に入ると、間取りが書いてあるプリントと一緒に部屋の鍵を受け取った。
 私の部屋は同級生二人と先輩二人の四人一部屋になっており、両壁に並んだ二段ベットとそれを挟んで勉強机があるシンプルな作りになっている。差はあれど大体どこの部屋も同じらしい。
 私は幸いにも梓さんと同じ部屋で、同部屋の四年生の先輩に挨拶を済ませるとそのまま部屋と寮の案内までしてもらった。
「高校の後輩とか入ってくると基本その子と同じ部屋になるんだけどね。律はそのへんいないし〜」
「とか言ってるけど、梓ちゃんは櫻井ちゃんと同じ部屋がいいって真っ先に言ってたんよ〜〜〜」
「へぇ?」
「あ〜〜!秘密って言ったじゃないですか!」
 最初のうちは同部屋の先輩がマンツーマンで指導に当たってくれるらしく、私の担当は梓さんなのだと。
 事前に郵送していた生活用品や荷物を整理していると、もう一人の同級生も到着して先程聞いたような説明を耳にしながら和やかな会話をしていた。
「櫻井ちゃんって中学までバレーしてたんだっけ?
 ウチ、ちょうど入れ替わりやったから見たことないんよね」
「私は大会とかで結構名前聞いてましたよ〜」
「てか、春高終わってから練習とかしてた?」
「後輩に混ざって体育館使ったり、暇なときトレーニングしたりしてましたよ」
 合宿では試合もしたと言えばすごく食いつかれて、ビデオがあると言えば今晩見ようという話になった。
 
「待って、これ、相手ウシワカじゃん!!」
「うっひゃ〜〜!………凄い音やねぇ」
「あいっ変わらずクソムカつく顔してんね、及川」
「梓さんも相変わらずですね」
 最初は私たち四人で見ていたけど、明日から練習があるにもかかわらず談話室のテレビの前には結構な人数が揃っていた。
「男子と女子のネットって、確か二十センチ違うんよね?」
「二つ下に凄く飛ぶ子がいて………あ、このオレンジです。
 彼も低身長でミドルブロッカーなんですけど、ジャンプとか助走とか色々改良してたら全然慣れましたね」
「なるほど〜………あ、今のセットアップやばい」
「ソレ、律の彼氏」
「は!?櫻井さん彼氏いんの!」
「遠距離だ遠距離」
 
 そうして楽しく話していても、練習中は真剣そのもので全員が真っ直ぐ。
 最初は練習に少しだけ慣れなかったものの、昔の感覚を取り戻してからは高校で考えてたことや学んだことを少しずつ落とし込んで自分の力に変えていく。
 場所が変わっても自分がすることは変わらないと、思う存分飛んでやると意気込んだ。



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