「とりあえず、二年」
「二年………」
研磨君が一人暮らしを始める事と会社を立ち上げたと知ったのは同時だった。情報源はもちろん鉄朗で、その時研磨が律に相談したいことがあるって言ってたと聞いた。
研磨君は生粋のゲーマーで、それの感覚で株に手を出した。その結果、凄く儲けて会社を立ち上げたのだと。ちょっとその辺はよくわからないけれど、とりあえず凄い。
そんな研磨君が私に相談とは何事だろうと思い、鉄朗経由で連絡先を交換しお互い時間がある時に会って話がしたいということになった。
「でも、どうして私のスポンサーに?」
大学で選手として活躍しているけれどまだ無名で、世界大会への出場経験も無い。
企業と選手個人のスポンサーシップ契約は、選手が活躍してその企業をPRする事と、選手が活躍出来るよう練習場所を企業が整えることで成り立っている。だから、これは研磨君の方が不利な気がするのだけど。
「………律さんは、翔陽の進路は聞いた?」
「ああ、ビーチだよね」
「ブラジルのビーチバレーはペアを気軽に交代できるから個人にスポンサーがつく。翔陽は修行で行くとは言え公式に選手としてやるわけだから、誰かがお金を出さないと満足にできないでしょ」
「………つまり日向の支援の前に私で試したいと?」
「うん」
確かにスタートは無名だし、競技も似通っている。それに、大前提として私たちは知り合いだ。
「まぁ、それだけが理由じゃないけどね。
律さんは今は無名だけど将来的に大スターになる可能性は今までの傾向からしても高いわけだし、その時スポンサー企業になりたくても契約金が爆上りしてそうだから今のうちにって。
あと………父親の顔、広いでしょ?」
「…………そこそこね。本当にそこそこ」
元々海外でスタントマンをしていたので今話題のハリウッド俳優と面識があったりもするのだ。研磨君には洋画が好きだと話すした時その辺も言っていた気がする。
「バレーに限らずいろんな伝手はあるし、活躍した後のこちら側の利益が期待できる。そこで、無条件に律さんに投資できるギリギリは二年………2016年のオリンピックまで。だから、その先はその時の結果次第になるってこと」
「なるほど」
つまり研磨君は、私が五輪選手になるであろうことを前提としてこの話を持ってきている。ならなければそれ相応の負債をお互いに背負うことになるけれど、実現したらお互いに莫大な利益を得ることになるのだ。
「…………わかった。学校側には私から事前に話しておくけど、多分研磨君にも色々してもらうと思う」
「うん」
じゃあ、やるって方向で進めるね。と話をいくらか続けて、後日契約書を作成するとのことで話はまとまった。
契約は物的支援を主で、私が練習で使う物を研磨君の会社が負担するとのこと。
「あと、PRの他にもして欲しいことがあるからさ」
「うん?」
「個人でゲームの配信動画もしてるんだけど、律さんにも出て欲しくて」
「うん??私、ゲームとかしたことないよ?」
「だから面白いんじゃん。
バレー選手の律さんのファンが動画見てゲームに興味持ってくれるかもしれないしね」
「なるほど………」
「死なない程度に、挑戦しよ」
その時はよろしくと言った私に、研磨君はにっこりと笑みを浮かべて言った。
「期待してるね」
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