私たちの一つ下、縁下の世代が烏野高校を卒業する頃に私の親友である潔子に恋人ができた。
「田中と付き合い始めた」
「おめでとう」
「………それだけ?」
「え、それ以外に何かあるの?」
いつだって真っ直ぐな人が好きで、そんな彼らを応援したい。支えたいと話していた潔子だったから、初めて会った瞬間から今までずっと一途に好意を向けていた田中を無下にすることはないと思っていたし、私としては「やっとか」くらいの感覚だ。
「………世の中のカップルって何してるの」
「それ、私も徹と付き合い始めた頃思ってたヤツだ」
電話先で照れ臭そうに恋愛相談をする潔子はすごく可愛いと思うし、照れているであろうその顔が見てみたい。
私が東京に行ってからは長期休暇中遊びに来てくれたこともあったけれど、徹程ではなくとも潔子とも連絡をとっていた。
渡米して約一年後に電話先で婚約したと聞いた時も同じように祝った。…………まさか、知り合いで真っ先に結婚するのが潔子だとは思わなかったけれど。
『それで、龍と結婚式に呼びたいって話してるんだけど』
『律さんのスケジュールはどうなのかなって!』
「ちょっと待ってね」
多分、田中は日向も呼びたいと思っているだろうし他の友人のこともあるのだ。滅多に会えないからこそこういったことはなるべく出席したいと思っているけれど。
あちらで潔子のスマホをスピーカーにしているのか、二人の声が聞こえる。
「世界選手権の一次ラウンドが九月からだから、その三ヶ月前は無理………あ、六月に仕事で日本帰るからその時行ける」
『ほんと?何日?』
「えっと、」
九月下旬から始まる世界選手権はアメリカ代表としての出場が決まっており、三ヶ月前になるとチーム練が増えるのだ。
当分のスケジュールを伝えると、日程が決まり次第招待状を送らせてもらうねと返答が来た。
『律と及川君は話しないの?』
「ああ………全然」
『全然って、考えてないわけではないんでしょ?』
「そりゃ、まぁ」
徹と付き合い初めて五年が経過している。まぁ、殆ど遠距離で会っていないけど。
『律には幸せになってほしいって、ずっと思ってるから』
「潔子………」
幸せの形は人によって違うし、仕事…それこそバレー主体の今の生活が苦なはずもない。好きで、自分で選んだ道だから。でも、私が徹のことでずっと悩んでいたことを知っている潔子だから今の場合は『恋愛の幸せ』の話になるんだろう。
昔は、彼の隣にいるのは私じゃなくても彼が幸せならそれでいいと思っていた時期もあったな。
「………私より先に、潔子だけどね。
田中……いや、龍之介と幸せになりなよ」
『……ん』
「なんか、律まで呼び方を変えると照れるね」と潔子は笑った。
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