烏野での最後の練習が終わり家に帰ると、菅原から初詣の事で連絡が来ていることに気がついた。
元旦は東峰、その前日である大晦日は澤村の誕生日だから何かサプライズをしたいとのことだった。それなら、一月六日は潔子の誕生日だから、大会中で余裕もないかもしれないし一緒にしてしまいたいと提案した。
午後から潔子と出かけるので、何かプレゼントでも渡すかという話になりネットで色々と物色しながら意見を言い合う。
菅原は外見からそうは見えないけれど、三年生の中で芸人と呼ぶほど面白い事や楽しい事が好きなので、折角のサプライズだし派手にしたいようだけど。
「組体操は二人じゃできないしなぁ………」
「何でそんなに残念がってるの?しないよ??」
「ちぇっ」
本気で残念そうな声で言うものだから、一緒に企画する側としては冷や汗が出る。菅原の誕生日をど忘れしていた私は急遽飲み物を奢ったけれど、確かに時間がある中で男子にプレゼントを選ぶというのはなかなかに迷う。潔子はタオルをあげたと話していたけれど。
「あまり高価なものじゃない方がいいな」
「櫻井、お金はかけなくてもいいプレゼントなら沢山あるぞ」
「へぇ。例えば?」
「変顔とか」
「それ、本気で言ってる?」
「少なくとも俺は嬉しいと思うし、普通に櫻井の変顔見たい」
「嫌だよ」
ふざけているようにしか聞こえないのだけど、実際ふざけているのだろう。今後のスケジュールを書き記してある日記に目をやり、元旦までの日数を確認すると同時に仮卒期間に入った時の予定を考え金銭面の支出の目測を立てる。
「清水には何か用意したん?」
「うん。つっても参考にはならないよ」
仁花ちゃんはハンドクリーム、結はバックをプレゼントすると聞いたので、私は化粧品にしたのだ。あまり高価なデパコスは潔子の性格からして気が引けそうだと思ったので量販店で買える程度の落ち着いた色のリップだけど。来年から社会人として働く事が決まっているから化粧をする機会だって増えるだろうし、その際気が向いたら使ってもらえればいいなと思った。
「………よし、決めた」
「お!変顔する決心を??」
「その期待は何なの???」
高校三年間───私は二年の途中入部だからそこまで長くはないけれどお世話になったしこれからも友人として彼らを応援していたい。
「せっかくお正月だし、お守りにする。受験系かな」
「妥当だな」
「でっしょ。シンプルなのが一番だよ」
そう話すと菅原も「じゃあ俺は清水に交通系のお守り買お」と離したので、二人には割り勘で出すことになった。問題は、どのタイミングで購入して渡すかになるのだけど。
「家近いし先に行って買っとくわ。後でお金だけよろしく」
「ありがとう」
そうしてプレゼント談議は終わったのだけど、それなら私も菅原にお守りとか渡すべきなのでは。流石にジュースってのもと思い返した。
三人にプレゼントを渡すタイミングは菅原に任せているので、私もその時潔子に渡そうとバックに入れている小さなそれを確認した。帰り際に渡すのかとタイミングを見計らっていると、参拝の列に並んでいる時菅原が大きく咳払いしたと思ったら唐突に誕生日おなじみの歌を歌い出した。私もここは乗るべきなのだろうけれど、音痴だしと唇を噛んで笑いを堪える。
「ハッピーバースデーディア旭大地清水〜……」
「いや、無理やりすぎない???」
歌い終わると、菅原が朝買っておいたというお守りを三人に手渡したので、その流れで私も潔子にプレゼントを渡す。
「そんで、櫻井もな」
「え?」
「受験!頑張れよ!」
「え、えええ……ありがとう」
サプライズ成功だぜ!と菅原は笑って澤村達にピースをした。
どうやらサプライズ作戦の連絡を取り合っていたのは私だけではなかったらしく、私の分を男子三人が、潔子の分を私を含めて四人が。そして男子二人の分を菅原と私が買うこととなっていたらしい。
「何で私には何も言わなかったの………!」
「清水にはタオルもらっちゃったし、大地と旭にはちゃんと自分で用意したって言ってたから」
あのタオルは何だか使いづらくて開封していないので、春高で使わせていただきます!と菅原は頭を下げたら東峰と澤村もそれに乗って俺たちも春高に持って行こうと話した。
「………じゃあ、私も菅原誕生日のリベンジ」
「え?」
ポカンとしてる菅原に真っ白の紙に包まれたお守りを渡した。早めに家を出て違う神社に向かった私は、そこでお守りを購入していたのだ。ここのだと柄が被るだろうし、菅原も受験生だから学業祈願のお守りを買うのかもしれないと思って必勝祈願にしたけれど。
「……あの時は結局三人にジュース奢ったし、一人だけ無いのもね。はい」
「え、ええ〜〜!ありがとな!」
「、変顔はしないけどね」
「それでも俺は嬉しいけど!」
「ははは。俺も、ありがとうな」
「すごい効果ありそう。大切にする」
prev next
Back
Top