「仁花ちゃんは夏に入部したからTシャツ作ってないね」
練習中に西谷の着ている猪突猛進と書かれたTシャツを見てふと呟けば、皆ハッとした顔で私を見た。
「Tシャツ、ですか?」
「うん。ゴールデンウィーク前、西谷御用達のお店で全員作ってもらったんだよね」
「俺、今度作り行くからやっちゃんのも作るか!」
「!!ぜひ!」
「………私も作り直して欲しい」
殆ど田中と西谷が考えたらしく、潔子のデザインに私は失笑した思い出がある。
全裸かこのTシャツの二択にならないと着ないと言い張ったから、きっと箪笥の奥に眠っているんだろうと思いつつ二枚目を作ろう!という話になった。
「取り敢えず、全員フルネームは作るべきだと思う」
「清水、それは勘弁して」
「自分たちだけまともなの作るのはずるい」
まぁ、私も紺に白抜きで【櫻井律】だったから色はともかくフルネームは無いと思い返す。潔子はショッキングピンクだったからそれよりはまだマシだけど。
「それじゃあ、清水と櫻井と谷地さんの単語だけ考えるべ」
「だな〜!やっぱり清水は【才色兼備】とかか?」
潔子のは秒で決まったと思っていたら、澤村達は予想していたとのこと。田中達に考えさせなければよかった。
「谷地さんは【天真爛漫】がいいと思います!」
挙手したのは日向で、仁花ちゃんは疑問を持っていたけれど確かに合っているなと頷いた。いつも笑顔で、表情がコロコロ変わるところも可愛いと思う。
「櫻井は、………?」
「え、何がいいと思う。努力系?」
「【努力貯金】!!」
「却下」
四字熟語がいいと思っていたけれど、西谷の案を即座に蹴る。
「【磨杵作針】とか?」
「ましょさくしん??」
「努力した者が全て報われるとは限らないけれど、成功した者は努力しているってやつだな。ぽい」
「じゃあそれにすんべ」
たしかにカッコいい。そうしようかなと思ったところで別のものに変えた。
「夏から思ってたけど、烏野はTシャツのセンスどうしたんだ」
合宿中、鉄朗に言われて視線を逸らした。まぁ、練習着だし別に何着てようが良いと思うのだけど。
「西谷が作るしね。全員一枚はフルネームTシャツ持ってるよ」
「フルネームTシャツ??」
着る機会なんて無さそうだけど。と付け足せば、今度着て見せてなんて言われた。家でしか着ない。
「ん、てことは律が今着てるヤツも作ったヤツ?」
「全員集まるのはこの合宿が最後だからって、どうしても着て写真撮りたいんだってさ」
練習後に絶対撮りますんで!と西谷が意気込んでいたけれど月島や山口は市販品を着ているから持ってきてはいると信じたい。
「【一心一計】ねぇ……お前らしいな」
「でしょ」
【一心一計】。心をひとつにして一途に思うこと。
磨杵作針もかっこいいと思ったし類義語に一心一意もあるけれどどうせなら、とそれにした。
「意味もそうだけど、師の名前が入ってるからね」
漢字は違うけれど、読み方を変えればそう連想する。繋心さんと烏養さん…一繋さんを思わせる言葉だと思った。だから、コレにした。
なんて、鉄朗と話している様子をニコニコ見ていた猫又監督と武田先生に繋心さんが「愛されてるねぇ」と弄られていることを私は知らない。
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