「岩泉、」
「おう」
 ジッと、岩泉の肩を両手で掴んで視線を合わせる。すると彼は、数分と経たずにフイッと視線を逸らした。
「………岩泉」
「スマン……!」

 さっきからずっとこの調子だ。壁に埋め込まれたタイマーは五分と経たず零に戻ることを繰り返し続けている。
 彼が純粋に照れ臭くて、それにこう言う機会も滅多にないし慣れないのはわかるけれども。
「そろそろちゃんとしないと、出られないよ?」
「わかってる。だから、もう一回だ」
「うん」
 小さく深呼吸をして岩泉が私を見ると、またタイマーがカチカチと小さな音を立てて動き出した。でも、
「………岩泉」
「〜〜〜!何で俺なんだよ!こんな時に及川はどうした!?」
「そんなこと言ったって仕方ないじゃない
 閉じ込められたのは私たちなんだから」
「けどっ、けど……!」
 照れ屋というか、本当に岩泉は純粋だ。どこかの誰かとは違って。頭の中でウインクを決める及川を思い浮かべた。けれど、及川もこういうの照れそうだなと思い返した。
 でも、いつまでもこうしていても埒があかない。お腹も空いてきたし、この部屋には何もないからトイレとか、お風呂も入りたいし。
「……次、出来なかったらその目を無理やりこじ開けてやる」
「努力する」
「絶対よ」
「おう」
「よし。それじゃあもう一回」
 ガッと顔を両手で掴んで、ジッと岩泉の目を見つめた。



 その空間から出られたのは、それから約二時間後の事だった。



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