「淳太くん」



真夏は冬の早朝のような、透き通った空が似合う人やった。
凛として、いつも背筋を伸ばして、真っ直ぐに前だけを見る人。
今日も朝早いのに、ぱっちりした瞳をぱっちり開けて台本を捲る。

「……」
「小瀧、寝ない。あと10分で本番」
「…はい」
「なに?また寝坊?」
「違うけど、収録寝そうだから釘刺しといた」
「そら必要やな。のんちゃん、寝んなよ」
「…あい」

気の抜けた返事したら2人に睨まれた。
朝から怖いって。
俺は今にも瞼閉じそうなのに、朝強い2人は何食わぬ顔で台本読んでる。

「昨日のバラエティ見たで?」
「ほんま?ありがとう。何点やった?」
「46点」
「微妙やな」

淳太厳しない?
俺も真夏が出てた番組見たけどめちゃくちゃウケてたで?
全然良かったと思うねんけど。
重い瞼を無理矢理開けると、真剣にダメ出しする淳太が見えた。

「俺が前に言ってたやつ言うてたやろ?」
「そうそう、正義のミカタのやつ。いきなり振られたから焦ってもうた」
「後半突っ込まれてグダグダやったで?笑いに変えてたから良かったけど、あのままやったらただのアホ発言になってたわ」
「せやねんな。背伸びして頭ええ発言せんかったら良かったわ」
「せやで」

俺やったら朝からダメ出しされたくないで?
でもこれは日常。
真夏はいつだって淳太からの評価を求めてる。

「アドバイスありがとう。次は100点取るわ」
「それずっと言ってるやん。最高何点?」
「82点。一発めぇの時」
「よう覚えてんな」
「当たり前やん。淳太くんから100点貰うんが私の目標やもん」

真剣やった瞳が和らいで、にこって淳太に笑いかける。
それを見て淳太も嬉しそうに笑った。
関西ジュニアの頃から見てきたその光景に、俺も頬が緩む。

真夏は冬の早朝の空が似合う人や。
澄んだ空気の中で、ブレずに、真っ直ぐに進む人。

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