約束を守る話02



@aaaaaaa
【さよなら、青色。 7/● 夜公演(千秋楽)】見学

・横原悠毅(IMPACTors)
※見学2回目



@bbbbbbb
晴の主演舞台大千秋楽に駆け付ける横原くんやばくない!?
愛強くない!?
見学席にイケメンいるわって思ったら横原くんでまじで腰抜かすかと思ったんだが!?



@ccccccc
永岡さんがコロナにかかって残りの公演全部主演することになって心配になって大千秋楽のチケット取ったけど、今までで一番いい演技してて女優梅田晴の今後に期待しかないんだけど、とりあえず今言いたいことは、横原くんなぜ1人で千秋楽来た???
そんなにうめめの演技見たかった???



@ddddddd
【さよなら、青色。大千秋楽レポ】
カテコ

永岡楓ちゃんからお客さんへのお手紙を代読して大号泣のうめめ
ラメのアイシャドウがほっぺたにキラキラしててハイライトみたいですんごい可愛かった!
私の自担、泣いても世界一可愛いな!



@eeeeeee
あんまり見学いかない横原が2回も見学行った時点でお察しなのよ……。
主演とかコロナとかキスマイ魂のこととかいろいろあったにせよ、分かりやすいな……。
梅田のことめちゃめちゃ好きじゃん……。
どんだけ大事にしてんだよ……。



@fffffff
舞台中は静かに見てたしカテコも周りに配慮して控えめに拍手してたのに、幕が下りる直前で横原がIMPACTorsポーズしたら梅田がくしゃって顔して泣きながらIMPACTorsポーズしてそれ見た横原が爆笑しててそれ見てたよこうめめ厨の全私が泣いた
サマパラSPARKコンビやばい
今年のサマパラも絶対2人でなんかやってほしいけどそれ見られなかったら死ぬからチケットくれ



@ggggggg
私は声を大にして言いたいんだけど、梅田と基が仲良しなのは長いこと滝沢歌舞伎やってたからだし同い年同学年大学組で学生時代から交流あったからだし同じくくりで仕事することも多かったからだと思うし、だからキスマイ魂のお姫様抱っこも深い意味はないと思うんだよね!!!勝手な推測して荒れんなPINKy!!!
だが横原、お前は別だ。去年のサマパラから距離感おかしいぞおい。梅田のこと好きだろ。言え!好きだと言え!



@hhhhhhh
ながにゃんがコロナになっちゃってから、メンバーが仕事忙しい中で1人とか数人とかで梅田宛てに「舞台頑張って!」ってドTVを連日出してたのに1人だけいつまでも出さないじゃんって思ってたらそういうことですか横原さん
まさかの大千秋楽見学ですか横原さん
予想外すぎるよ



「……」
『先に言っとくけど、約束は破ってないから』
「べっつにー?俺はなんも言ってないけどー?」
『うわ、超機嫌悪いじゃん』
「は?全然悪くねえし」
『怒んなって、しゅん』
「怒ってないし」

イヤホンで横原の声を聞きつつ、twitterのつぶやきを見て心の底からもやもやする。
梅田から俺らメンバーには『大丈夫、心配しないで』って言いつつ暗に『来るな』って示唆されてたのに横原は会いに行った。
しかも大千秋楽。
梅田の一番の踏ん張り時で、一番苦しい時で、一番、俺が会いに行きたかった場所。
でも梅田の思いを無視して会いに行ったのは横原で、梅田の思いを尊重した俺は梅田のマンションの前で突っ立ってる。

「なんで行ったの?」
『笑ってないんだろなって思ったから』
「違うっしょ。誤魔化すなよ」
『本当だって』
「嘘だ。……俺と梅田のためだろ」

電話の向こうで横原が息を吸い込んだ音が聞こえた。
俺が気付かないわけない。
結局、全部横原の思惑通りだ。
キスマイさんの名古屋公演をきっかけに俺は梅田と距離を置いてる。
いつもだったら誰も気にしないような些細なことでも騒がれるようになった。
目が合っただけ、手が触れただけ、名前を呼んだだけ。
窮屈になってしまった今の状態じゃ、梅田が苦しくても俺に頼れない。
だから、横原が会いに行ったんだろ。
Twitter見たらその効果は一目瞭然だ。
横原と梅田の方が仲良いんじゃない?IMPACTorsのメンバーの距離感って近いんだね、キスマイの時のあれに特別な意味なんてないのかもね。
『普段見学に行かない横原が2回も梅田の舞台を観に行った。しかもカテコでアイコンタクトして仲良い雰囲気だった』
そんなレポが流れたら一気に拡散されて、倒れた梅田を俺が助けたことに特別感はなくなる。
俺と梅田は元の距離感に戻れる。

『……違うんだなー、これが。俺もそんなかっこいい奴になれたらよかったんだけど』
「よこ、」
『ただの嫉妬』
「っ、」
『しゅんは、舞台終わったら晴のこと抱き締められるけど俺はできないから。だからしゅんが行けないタイミングで会いに行って魔法なんていい感じの言葉で包んで自分勝手な気持ちを押し付けたんだよ』
「……」

嘘だけど嘘じゃない、嘘だけじゃない。
確かなことなんてなにも分からない。
横原がどんな気持ちで梅田に会いに行ったのか、どんな気持ちで俺に電話してきたのか、それを俺が知ることはできない。
横原の言葉を信じるしか、選択肢はない。

『晴さ、あいつ、めちゃくちゃしゅんのこと好きだよ』
「…うん」
『本当、悔しいくらい好き』
「……」
『だから約束は絶対に守る』

なんなんだよ。
それを俺に言って何がしたいんだよ。
約束を守るのはどっちが?
横原が?梅田が?
よこがどれだけ梅田を想ってても好きって言わないってこと?
俺が何度好きって伝えても梅田が応えることはないってこと?
分からないことばっかり並べてよこは電話を切った。
お互いの想いが複雑に絡み合って、どんどん絡んで、もう解けないのかもしれない。
メンバー内恋愛の正解は一向に分からないまま。

「っ俊介!」
「お疲れさま、梅田」

名前を呼ばれてイヤホンを外したら、大千秋楽を終えた梅田が走り寄ってきた。
目元が赤いのは泣いた証拠で、ちょっとふらついてるのは最後まで走り切った証拠だ。
俺と目が合って笑った顔を見て、ああ、好きだなって実感する。
『終わったらなに食べたい?』ってLINEに『家でウーバーしたい』って誘ってくれたのは梅田で、なんの躊躇もなく家に入れてくれるのは信頼なのか。

「散らかっててごめんね、ずっと仕事ばっかりで」
「ううん、大丈夫」

全然散らかってない部屋に荷物を下ろした梅田は、エアコンのスイッチを入れて洗面台に俺を通した。
手洗いうがい、マスクを処分すると俺の正面に立って断りを入れる。

「エアコン効いてないからまだ暑いよね?」
「あー、そうだね」
「劇場でシャワー浴びてきたけど汗かいてるかも、ごめん」
「え?なんで謝るの?…っ、」

家に帰ってきてまだ数秒しか経ってない。
梅田は一度も腰を下ろしてないし、変装用の眼鏡もかけたまま。
俺の正面に立った梅田は控えめに両手を広げた。
なにが言いたいのか気付いて口元が緩んだけど、分からないふりをする。

「え、なに?」
「…千秋楽までやりきったから」
「だからなに?」
「…わかるじゃん」
「わかんないよ」
「…にやけてるから分かってるでしょ」
「えー?わかんない」

分かってるに決まってる。
全身から『ぎゅうってして』ってオーラが出ててめちゃめちゃ可愛い。
両手広げるのもじっと見つめるのも自分から言えないのも可愛いけど、俺は欲張りだから梅田の口からそれが聞きたくて。
もっと俺を必要としてほしい。
はっきりと言葉で俺を求めてほしい。
我慢せずに甘えて、俺だけに強請ってほしい。

「梅田、ちゃんと言わないとわかんな、」
「キスして」
「っ、……え?」
「キスしてよ、俊介」

それは、予想外だ。
自分で眼鏡を外して真っ赤な顔で強請ってきた梅田の耳にピアスホールが空いてる。
主演舞台が決まった時からそこにあった宝石みたいな輝きは外されて、梅田の大きな仕事が終わったことを表してるみたいだった。
そこに触れて、随分長く伸びた髪を梳いた。
一瞬たりとも俺から外さない視線に吸い込まれそう。
何度触れたって飽きることはなくて、むしろどんどん欲しくなるから本当に困る。

『晴さ、あいつ、めちゃくちゃしゅんのこと好きだよ』

本当に?
梅田は俺のことが好きなのか?
直接聞いたことのない想いを、これから先聞けないかもしれない想いを、いつまで信じることができる?
いつまで我慢できる?

「…ん、」
「はっ、…んぅ」

触れた肌が汗ばんで暑い。
生温いエアコンの風が部屋の酸素を薄くしてる気がする。
薄ら目を開けると、ぎゅって強く目を瞑ってる梅田の顔がぼんやり見えた。

「ん!?」

ぼやける視界の中で何かが煌めいた気がした。
梅田の瞼に星が見えた気がした。
カッとなって衝動のままに壁に押し付けて強く唇に噛みついても梅田は拒まない。
どんなに深くキスしても、梅田は応えてくれる。
まるで頭の中にある何かを探すようにキスを繰り返す梅田に心がざわざわする。
こんなに不安になるキスは初めてだった。
何度キスしても、何も満たされなかった。



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