キラキラを飲み込む話



何度このキラキラを飲み込んだって、すぐにカラカラに渇いて干からびてしまう。
光を求めるのは、この世界に入った者の宿命なんだろうか。
TDCいっぱいに光るペンライトは、去年より勢いを増しているように見えた。

「夏だ!騒げーーー!!!」

影山の声がマイクを突き抜けて地声でも聞こえた。
全員がテンション上がっているのは、もしかしたらこの景色を見られる夏は今年が最後かもしれないって思ってるからかな。
滝沢くんの退社が告げられてからもう数週間経つけど、私たちはまだ進路を決められていなかった。
焦って決めるものでもなく、ただ決断の時は待ってくれない。
メンバーが今まで以上にひとつひとつのお仕事を大切にしているのは、きっと気のせいじゃない。

MCで今後のお仕事の話が進む中、ニヤニヤした横原が私を見てきた。

「あれ?え?ええ?」
「…なに?」
「梅田からお知らせは?」
「私からはないです」
「俺ら順番にお知らせ事したのに?梅田からは?」
「だから、ないってば」
「いやいやいやいやー」
「横原しつこい」
「言っちゃう?うめめ言っちゃうの?」
「言っちゃうのか?」
「いい感じに煽ってもらったところ悪いけど、私まだ言えないからね!」
「それ言っちゃってるようなもんだけどね」
「やばっ!持ってない!お仕事持ってないです!」
「もう遅いって」

察してくれたファンの子達が拍手してくれて、嬉しいけど情報解禁前だから笑って誤魔化すしかない。

「皆さん!晴はまだ言えないけどお仕事持ってますよ!」
「言うな影山!」
「でっかいの持ってますからね!」
「新も乗るな!」
「あと数ヶ月待ってくださいね!」
「もー!みんなまとめて偉い人に怒られろ!」

私以外の全員が直近のお仕事が発表されたのに私だけがない。
MCの途中で私のうちわを持ってた子の顔が曇ったから横原がきっかけをくれたってことはわかってるけど、これは本当に怒られるかもしれない。
私の情報解禁はまだ先だから。
喋りに夢中になってた私の腕を俊介が叩いて、ボトルを渡してくれた。
あ、水分補給。

「梅田の情報以外はもうネットに載ってますから、皆さん随時チェックしてくださいね」
「お願いしまーす!」
「チェックするだけじゃなくて来てくださいね!」
「ほんとそれ!皆さん俺らに会いにきてくださいよ?」
「うめめも来てよ?」
「行く行く」

自分のお仕事はもちろん、メンバーのお仕事もめちゃくちゃ楽しみだ。
この秋は全員が違う場所で、全員が戦うことになる。
未来のことはまだわからないけど、今できることを精一杯やれば絶対に結果はついてくる。
次の曲に行く前、照明が落ちればペンライトがキラキラ輝いて光の海みたい。
この景色をもっと広くしたい。
もっと大きな光を見たい。
光を力に変えるように、大きく息を吸い込んだ。

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