022



「ちょ、ちょ、ちょ、え!?なに!?」
「お取込み中ごめん!」
「キスする3秒前っぽい雰囲気だったけどごめん!」
「基はあとで絶対返すから、ごめんね?」
「ほんとにごめんな!基借りる!キスは今度にして!」
「はあ!?なんなんだよ!」
「……え、なに、どういうこと?」
「っごめん!あとで梟飛ばすから!ほんとごめん!!!」
「ちょっと!俊介!?」

ありえない!
ほんっとにありえない!
まじでこいつらやっちまいそう!!!
クリスマスパーティーも終盤、日付変わる直前、数週間前から下見してやっと見つけた2人っきりになれる場所。
誰の邪魔も入らずに2人で過ごせるって思ってたのに、乱入してきた3人にキレそう。
なんなんだよ!
無理矢理連れてこられたのはバルコニーで、拓也は禁じられた森の奥の闇を指さして焦った顔で迫ってきた。

「見て!!!」
「…は?」
「眼鏡!基の眼鏡で見て探してくれよ!」
「なにを?」
「エマを!エマの声が聞こえたんだ!助けてって確かに聞こえたんだよ!」
「継承式でなにかあったのかもしれない」
「えー、そうかな?横原と奏と新も一緒だから大丈夫じゃない?大体、エマが人に助けを求めるなんて考えられな、」
「キスするとこ邪魔したのはごめん!謝る!あとで俺のこといくらでも怒っていいから!」
「見て、なにもなかったらすぐ戻ってキスしていいから」
「クリスマスにキスって定番だもんな?すぐ戻りたいよな?見てくれたらすぐ戻っていいから、」
「あー!もー!キスキス言うな!恥ずかしいわ!エマの声聞こえたのいつ!?」
「さっき!」
「正確に!」
「1分くらい前、23時55分」

本気で焦ってんのか弄ってんのかどっちだよ!
真剣な顔でふざけたこと言ってるからよく分かんないけど、拓也の“これ”は当たるって身に染みてるから断れない。
それに、こういうことがあるからいつも眼鏡を持ち歩いてるんだ。
ドレスローブの中に入れておいた眼鏡をかけて夜の空を見つめる。
これでなにも見えなかったらどうしてくれるんだ。
本気でこいつらやっちまいそ、…っ!?

「なに!?見つけた!?」
「…校則10以上破るけど拓也なら絶対止まらないと思うから俺も付き合うわ。ばっきー箒!」
「へ?」
「4分!あと4分でエマが成人する!そうしたら”におい”で追えない!今行かないと間に合わない!」
「なに見えたの?」
「説明してる暇ない。飛びながら説明するけど、簡単に言うと、……エマ達が殺されるかもしれない」
「っ!?」
「学校じゃ姿現しはできないから箒で飛ばすしかないよ!」

拓也がヒュッて息を吸い込んだ。
聞こえた声は間違いでも気のせいでも妄想でもない。
きっと本当のエマの叫び。
エマだけじゃない。
横原も奏も新も叫んでる。
助けてって叫んでる。
その声を、俺たちは聞き漏らしはしない。
仲間を絶対に見つける。


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