スイートマジック
「しーんー。」
「?ああ、鈴火かぁ。」
いつものように家の手伝いをしていた進は、不意に呼びかけられて手を止めてそちらに視線を向けると、斜向かいにあるアンティークショップに住んでいる双子姉妹の妹の方である鈴火が立っていた。
「どうした?今日は那由多と一緒じゃないのか?」
「うん……えっと……。」
鈴火はとても人見知り気味で、姉の那由多以外では進とレイの幼なじみたちとしかまともに喋ることができないほどだった。そんな彼女が、どこかもじもじとしながらどう切り出そうか悩んでいる様子でいる。
とりあえず進は彼女が喋りだすのを待つことにした。
「……進、甘いの、食べれる?」
「え?ああ、うん、食べれるけど。」
その言葉に安心したように鈴火は笑うと、後ろに回していた手を前に回して進の前に差し出す。
「……?」
「あのね、バレンタインの贈り物……おばあちゃんたちとね、作ったの、進にもらってほしいなって……。」
自分の様子をうかがうように見つめる鈴火に一瞬ぽかんとするものの、進はすぐに笑ってありがとうというとそれを受け取った。
それをそのまま開く。薄いピンク色のマカロンが4つ、小さな箱に収まっている。
「これは?」
「あのね、マカロンていうんだって、おばあちゃんが美味しいよって……。」
「ふうん、」
そう言いつつ、進は一つ摘んで一口かじってみる。さっくりとした食感の外側と、中のいちごチョコのクリームの甘酸っぱさに目を細める。
「うん、美味しい。」
「本当?よかった。」
安堵したように笑う鈴火を見て、進も笑っていた。
「しーんー!」
「ん?ベルか。」
初めてのバレンタインから10年以上経った。あの後も毎年、バレンタインに様々な手作り(といっても中学に上がるまでは大体を彼女の祖母や母が作っていたが)の菓子を受け取っている。
「はい、今年もバレンタイン!」
「ん、ありがとな。」
「どういたしまして!」
にこにこと笑いながらそういう鈴火の頭を軽くぽんと撫でてつつ見下ろす。人見知りはまだ残っているものの、昔ほどひどくはない。オシリスの他のメンバーとも順々に打ち解けていった。
それはいいのだが、懐いた相手には異常に距離感が近いために危なっかしく感じることもある。
「進〜?」
「ん、ああ……なんでもない。」
そう言いながらも、進は鈴火の肩を無意識に抱き寄せる。
「んぇ?」
「他にも渡すのか?」
「んー、レイとー、まことー、京にあげるー。」
「ああ、いつもの、だな。」
「あ、進のがいっちばん上手くできたやつだよ!」
にっこりと笑いながらそう言う鈴火に、進も釣られるように笑うと鈴火の方から抱きつかれる。
「っと、ベル?」
「進ー、だいすきー!」
「……ベル、」
「ん?」
抱きついて甘える最中に呼ばれ、鈴火は顔を上げる。すると、不意打ち気味に進の唇が額に触れる。
一瞬間が空き、鈴火の顔が一気に赤くなる。
「し、進……、」
「ん?」
「ん?じゃないよお!もぉ〜〜!!」
そう言ってポカポカと胸を叩く鈴火を、にこにこしながら進は見つめていた。
「なあ、あれ止めなくていいのか?」
「ほっときなさいよもう……。」
「……なあ那由多、俺には〜?」
「……はい。」
「よっし!!」
そんな二人を眺めるレイと那由多も呆れたようなことを言いつつ、ちゃっかりといちゃつき合っているのであった。
END
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作成:18/2/14
移動:20/8/31