焼魚定食が好き



ハンバーグ定食を食べ終え、隙を見て上手くてに〜ずから抜け出した俺はそのままの足で屯所に向かっていた。今から戻れば昼過ぎの会議まで後二時間程は昼寝出来そうだ。
神月が追ってくる前に屯所へ戻ろうとしていると前方から隊士二人がやって来た。

「(チッ、タイミング悪ィな)」

雑談をしつつ見廻りをしていた隊士達は俺の存在に気付いた様で足早に駆け寄って来た。

「あれ?沖田隊長、神月補佐と見廻りじゃなかったんですか」
「まさか神月補佐を置き去りにしてサボってるんじゃないですよね!?」
「違ェよ。あいつは旦那と仲良くランチしてたんで邪魔しちゃいけねェと思って置いて来たんでィ」
「え〜!?やっぱり神月補佐と万事屋ってそーいう…」
「ま、お前らそっとしておいてやれよ」

二人にサラッと適当な嘘を吐きこの場を切り抜ける。こんな所で油売ってる場合じゃねェんだ。
そういや土方のやつ昼過ぎの会議に使う資料を午前中作ってるとか言ってたな…。そうなると屯所に戻るのは諦めた方が良さそうだ。仕方がない、河原で我慢するか。


―――嗅ぎ慣れた煙草の匂いで目が覚めた。
河原の芝生に横になってからどのくらい経ったのだろうか。然程経っていないような気がすると思いながら辺りを見回して見ると、煙草を吹かせながら足早に何処かへ向かう土方さんを見つけた。先に屯所へと戻った神月に言われて俺を捜しているのか。それとも神月もまだ戻っていないのか…。どちらにせよ怒鳴られるのは確実だろう。
しかし、あんな眉間に皺を寄せてどこへ向かっているのか気になった俺は尾行することにした。
暫く尾行を続けていると見知った二人の影が見えて来た。嗚呼…そういうことか。これは面白くなってきた。
旦那から神月を引き離し、屯所へと帰る二人の後を程よい間隔を空けて尾行する。

「んな事言ってんじゃねーんだよ!俺が迎えに言ってやるっつってんだろーが!!」
「……?」

そんな台詞が響き渡り思わず面食らってしまった。神月が足を止め、自ずと俺も土方さんも足が止まった。このままじゃ見つかりかねないので適当に木の陰に身を隠し二人の様子をうかがう。
きょとん、とした様子で土方さんを見上げる神月。首を傾げ、土方さんから目線を外し、うーんと唸る。

「んだよ」
「い…いえ。よく分かりませんがこれからは逐一土方さんに連絡をしますね」
「あァ」

何だこれ。
これは推測だが、神月はあの事件以来一人で出歩く事を禁止されている。そして旦那に屯所まで送られている事を何処からか嗅ぎつけたあの野郎が神月を迎えに来た。そして自分より旦那を頼っているのに嫉妬を…。
これは色々と試して見る価値がありそうだ。さて、その前にやる事がある。

「イテテテテテ!!!!かっ…勘弁して下さいよォ沖田隊長!!!!」
「ああ?  テメーら俺がサボってた事土方にチクっただろ」
「サボっ…!やっぱりあの時神月補佐置いてサボってイテテテ!!!!」
「ごちゃごちゃ煩ェんだよ。  死ぬ覚悟は出来てんだろうなァ」

先回りをし、二人より屯所へと戻ってきた俺は先程街中で出会した隊士達を見つけては早々締め上げていた。
俺の様子を察知した隊士達であったが抵抗する間も無く二人仲良くワッパに繋げてやり、逃走出来ないようにしてやった。

「おっ俺達は別に沖田隊長がサボってたなんて一言も副長に言ってませんって!!」
「そうっすよ!ただ神月補佐が万事屋の旦那と仲良くランチしてるらしいって言っただけですぜっ!!」
「テメーらがそれを言ったことによって神月と俺が一緒に居ないことは明確じゃねェかボンクラ共が」

二人の間に入り両腕で羽交い締めにしていると目の前に大きな影ができた。見上げると先刻屯所へと戻った土方さんがそこに立っていた。ギロリと睨まれ何となく言われるだろう事が分かってしまう。
羽交い締めにしていた両腕を緩めると、俺と土方さんの様子を見て逃げるように隊士達はこの場から退散した。

「今までどこほっつき歩いてた」
「嫌だなァ、きっちり見廻りしてやしたぜ」
「ふざけるな。またサボってただろお前」
「そいつは誤解ですぜ。神月のやつがどーしても旦那と二人きりにして欲しいって言うもんで俺はそれに応えただけでさァ」
「お前な…」
「それに面白いもの見せてもらいやしたぜ土方さん」

男の嫉妬は見ていられやせんぜ。と言い捨てて先程退散した隊士達の後を追った。



20170616
真選組副長補佐編  続

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