不透明な恋情

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「あのね……正直、オレも最初はそこまで#name1#さんの事好きではなかったんだ。#name1#さんの言った通り、勢いに圧されてね……」

 氷室さんのしなやかな指がこぼれ落ちる涙を一粒一粒優しく受け止めてくれる。やっぱり王子様だ、この人は。

「やっぱり……すみません……」
「謝らないで。今は違うよ、本当に佐藤さんが好きなんだ」
「はいぃ〜……」
「どこが好きか訊かれたら在り来たりかもしれないけど佐藤さんの全部が好きなんだ、照れ笑いした時の変な顔とか」
「へっ、変な顔、ですか……!?」
「それも可愛い思えるって話だよ。あぁ、ほら、また泣く」

 だって好きな人から変な顔してるだなんて言われたら恥ずかしすぎて泣くに決まってるじゃん……!
 氷室さんは相変わらずこぼれ落ちる涙を全て受け止めてくれて、私はズズッと鼻をすすった。本当に情けなさすぎる……。

「佐藤さんて、オレと話すときまだ緊張してるだろう? その時のおろおろしてる佐藤さんとかとても可愛いんだよ」
「わ、私、そんなに分かりやすいですか……?」
「耳とかいつも真っ赤になってるし、でもオレと話そうと頑張ってる佐藤さんが本当に可愛いくて仕方ないんだ」
「あぁぁ……あの、とても、は、恥ずかしいんですが……!」
「バスケの話なんて女の子からしたらつまらないはずなのに、佐藤さんが何も言わずにニコニコ聞いてくれるからつい止まらなくなってしまってね……それも本当に嬉しい」

 それは私が氷室さんをもっと知りたいからだ。学年が違うから気軽に会えない分、少しでも氷室さんの考えや見ているも触れているものすべてに共感したい。
 バスケのルールとか名前がいっぱいあってなかなか覚えられないけど、氷室さんが本当に楽しそうに話しているから私も楽しくてつまらないなんて思ったことは一度もない。本当にバスケが好きなんだなって。

「オレもね、佐藤さんと一緒にいると何だかすごく落ち着くんだ」
「……本当は私、もっと氷室さんと一緒にご飯を食べたいです。緊張しちゃってあんまり話せないかもしれないけど……」
「オレももっと佐藤さんの事が知りたいな」
「手も、繋ぎたいです。いっぱい色んなことがしたいです……でも、一番は……氷室さんのこと、辰也さんって呼びたいです……」

 止まっていた涙がまた溢れ出してきて、私は情けなく嗚咽を漏らしながら泣き出してしまった。こんなつもりじゃなかったのに……でも気付いたら私は氷室さんの腕の中にいて、抱き締められたんだと気付くのに三十秒くらいかかった。
 初めて抱き締められた。部活をやっているから氷室さんの腕や身体はとても逞しくて男らしい。私は氷室さんの胸におでこを付けた。ちょっと早めの鼓動が伝わってくる……。

「ごめんね……」
「謝らないでください……私のわがままなんですから……」
「だから、もっとわがまま言ってほしいな……オレは誰かと付き合う事は初めてではないけど佐藤さんは初めてだし、その大切な一番目にオレを選んでくれたんだからさ」

 もっと甘えていいんだよなんて耳元で囁かれたら本当に心臓が持ちませんよ……。
 こんなに素敵な人が今まで誰とも付き合ったことがないって言う方が驚きだ。きっと私より素敵な人と付き合ってきたんだろうなって想像が付くから不思議とショックは少ない。

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