猫茶日和 > MY HERO ACADEMIA > 不憫で憐れな霧々くん
「いーよなぁ…くれる相手がいる奴はさー」
事の発端はなんて事ない、高校生男子らしい会話だった。
バレンタインが近づいてくる2月上旬。
街に並ぶショーウィンドウはその時期らしく赤やピンクのカラフルな色で埋め尽くされている。
クラスの女子達もいつも以上に浮き足立ち、こっそりと、でも、楽しそうに…
教室内で笑顔で会話する姿を目にする日が続いていた。
最初は我ながら情けない事になんであんなに女子達が騒いでいるかあまり気に止めていなかった。
先程の上鳴のセリフを聞くまでは……
「ああ、そー言えば今月はバレンタインだったっけ…」
いつものように爆豪達と一緒にトレーニングを終えたオレは寮のリビングにあるソファーの一角で手にしたペットボトルの水を飲み干した所だった。
オレがそう呟くと上鳴はすかさず会話を続けて来た。
「何!?爆豪や切島はともかく!なんで瀬呂までそんなに落ち着いてる訳??」
(中々に俺に対して失礼な発言だぞそれは…)
上鳴の発言に少し眉根をよせたオレがジト目で上鳴を見ていると…
さっぱり分からないといった表情で話題に登った切島が言い出した。
「おいおい、バクゴーは分かるがオレは関係無いって!」
晴れやかに爽やかに…切島は聞いた俺達が理解するのに数秒かかるような発言をのたまった。
「「はぁ!?」」
さすがのオレもこれには驚いた。
オレ等のように声には出していないが、あの爆豪も驚いた表情のままで水を飲む手が止まっている。
「なんだ、どーした?皆して?」
驚きの発言をした切島だけがオレ等の気持ちを理解出来ていないようだ。
「いやいやいや、切島何言ってんの??」
上鳴がすかさずツッコミを入れた。
「お前は!貰える側だろうが!?」
(うん、オレも…流石にそー思うよ)
言葉には出さなかったがオレも、爆豪でさえも…上鳴の発言に対しては同意しか無くて、すかさず切島を見た。
「そうかァ?そんなんオレだって、当日になってみなきゃわかんねーって」
全くもって上鳴の発言の意図を理解していないような切島の言葉にため息が出そうだ…
「霧々は!?」
「霧々?アイツがどーかしたのか?」
「マジで言ってんの!?」
「何が?」
「ウソだろ…おい」
流石に今度は言葉がもれた…
爆豪も今まで以上に驚いた表情で切島を見ている。
だよなぁ、コレは流石に驚きだ。
「なんだよ、瀬呂まで…」
「いや、それは流石にこっちのセリフだわ」
思わず呟いてしまったオレのツッコミに切島は不満そうな面を向けると怪訝な顔をしてコチラを見て来た。
(全くもって…気付いてない顔だなこりゃ…)
どうしたもんかな……
コイツらと同じクラスになってようやっと1年が経とうとしている。
その間、驚く程に色々な事があった。
体育祭に始まり、USJヴィラン襲来事件。
林間学校にインターン…
文化祭やクリスマス。
同じクラスの仲間として…クラスメイトとして、…ある程度周りの状況をオレは見ていた。
見ていれば色々と把握出来る事もある。
クラスメイトの『霧々まい』は、
……『切島鋭児郎』にホレている。
どう見ても、誰が見ても。
そもそも霧々まい自身が自分の気持ちを隠していない。
なのにコレだよ…肝心の切島本人に全くもって伝わって居ない…
(霧々自身はあんなに分かりやすい態度なのに…ハッキリ言わないと分かんねぇのか…)
「ちょっと…流石に霧々が可哀想になって来たわ…」
「オレも…チョコ貰えんのは羨ましいけど、それ以前だわ…なぁ、爆豪?」
「…心底どーでもいいわ…」
「またまた〜自分は薬我から貰えんの分かってるからってー」
よせばいいのに上鳴は爆豪に余計な事を突っ込んで……
案の定、爆破されていた。
そんな現場を横目で見ながら切島に目線を移すと…やっぱり不思議そうな表情で言葉を紡いだ。
「バクゴーは薬我と幼馴染であんだけ仲良いんだからそりゃ貰えるだろーけどさ…
オレと霧々は中学からの腐れ縁ってだけだから…やっぱし期待してもなぁ?」
そんなん、ズーズーしーだろ?等と爽やかに笑顔で言ってくる始末だ。
(コレは本格的にどうにかしないとダメな気がする…)
悪気を一切感じない切島の笑顔が余計に…オレにこの現状を霧々に伝えなきゃいけない気持ちにさせた。
バレンタインまで後、約10日…
果たしてどうなるのか、オレにも分からないが…頑張れ。
そう思うと、オレは今ここに居ないクラスメイトを案じて天を仰いだ。
後日、殆どの1Aの皆を巻き込んで『哀れで不憫な霧々くんをどうにかし隊』が発足されたのは…また別のお話。
written by りんご茶
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