Real

 寄せては返す海の潮騒。吹き過ぎる潮風と冷たい匂いが肌を撫でる。気持ち良い。
「ミルフィ。知っているか?」
「なぁに?」
「海の水は――惑星の、大地の命の血液なんだ」
「私達の体に流れる血と同じなの?」
「そうだ。だから大地は風が吹いて呼吸をしている。寄せては返す波の流れは血液の循環と同じ。惑星も生きているんだよ」
「わぁ! 知らなかった!」
 繋いだ手のひらの温もりが強くなる。低い声が耳に心地良く響く。海の音に決して掻き消されることはなくしっかりと届いて彼女を安心させた。

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2017/04/05 姫子 

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