命
寄せては返す海の潮騒。吹き過ぎる潮風と冷たい匂いが肌を撫でる。気持ち良い。「ミルフィ。知っているか?」
「なぁに?」
「海の水は――惑星の、大地の命の血液なんだ」
「私達の体に流れる血と同じなの?」
「そうだ。だから大地は風が吹いて呼吸をしている。寄せては返す波の流れは血液の循環と同じ。惑星も生きているんだよ」
「わぁ! 知らなかった!」
繋いだ手のひらの温もりが強くなる。低い声が耳に心地良く響く。海の音に決して掻き消されることはなくしっかりと届いて彼女を安心させた。
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巫女
石壁に燈された松明の火に照らされた空間。空気はひんやり冷たくて涼しい。
長い裳裾を揺らして松明の火の傍に寄った少女はゆるく掌をかざした。
赤橙の火がゆらりと動く。
「さあ、あと少し」
正儀式の始まりの鬨までもう直ぐ。
神の声を訊くために三日三晩を禊ぎ守り、それが終える。
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