レゼナが咲いた日
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ピュルル ピー
遥か頭上の上空を、数羽の鳥が北から南に飛んで行った。カズラ鳥だ。カズラ鳥は寒い地から暖かい地を求めて春頃──レゼナが咲く季節に飛来する渡り鳥だった。陽光は暖かで優しく、本格的な春が来るのも間近である。
「おっ。カズラ鳥かー。春だなぁ」
「そうね」
ミルフィはハウエルの言葉に生返事を返した。
ハウエルはミルフィの幼なじみだった。
レイストン牧場の末息子で、ミルフィより一つ年上の十五歳。淡い金の髪に青い瞳が印象的な少年だ。ハウエルは近辺の各家庭に、早朝ミルクを売る仕事を学業の傍らしていた。
ここはレイストン牧場の馬の厩舎の近くである。ミルフィは馬の放牧場の木柵の上に座り、足をぶらぶらとさせていた。
「ミルフィ。もうすぐで春休みだな」
「そうね」
「今年は旅行の計画はあるのか?」
ハウエルは愛馬のレジーにブラシをかけてやりながら、柵の上のミルフィにしきりに話しかけているが、ミルフィは上の空だ。
遊びに来てくれたのは嬉しいがどうも様子がおかしい。
「フィー」
ハウエルは幼い頃からの愛称で呼びかける。
「なぁに?」
「ユージンさんと喧嘩でもしたのか?」
そう聞いた途端、ミルフィの両瞳にはみるみるうちに涙が盛り上がった。ハウエルは仰天してミルフィに駆け寄った。
「フィー!?」
ミルフィは柵を身軽に飛び降りると、ハウエルの胸にしがみついた。ハウエルは狼狽してミルフィの肩を抱く。
「私……家を追い出されちゃった」
グスリと鼻を啜りながら爆弾発言をしたミルフィに、ハウエルは「ええ!?」と声を張り上げた。
「何だって?」
まさかと思って聞いてみたのだが、予想外の言葉にハウエルは大いに慌てた。
家を追い出されたって!?
「いったいどういうことだよ……」
「あのね──今朝、家にユージンの知り合いが訪ねてきたの」