忘却の姫子
しおりを挟む

レゼナが咲いた日 
 風変わりな青年だった。青年──ルシアスとユージンは、長い間ずっと、抱擁を解かなかった。
 ユージン、この人は誰? と内心疑問符だらけのミルフィを余所に、ユージンは心の底からルシアスの訪問を喜んだ。
 突然だったにも関わらずだ。
 随分と親しい間柄に思えた。

「何年ぶりだろうな。本当に大きくなった」
「ええ。あなたは変わらない」
「何を言う。俺はもう三十六だ。立派なオジさんだ」

 ユージンは軽く笑った。

「ああ、そうだ。ミルフィ。この人は俺の古い知人だ」

 ミルフィの視線にようやく気が付いたユージンは、ミルフィの肩を抱くと引き寄せた。改めて、ミルフィとルシアスは向き直った。

「初めまして。ミルフィと申します」

 ペコリと頭を下げる。少し緊張していた。
 ルシアスは下から上までミルフィに視線を流して見つめた。ミルフィは挨拶を返しもしないルシアスの態度とその視線に、むっと唇を尖らせた。
 なあに、この人。失礼だわ。

「……この子が……そうなのか──」

 彼がそう呟いたのが辛うじて耳に届いた。

(え……)

 どういう意味だろう。
 思う間もなく、ユージンはポンとミルフィの頭に手のひらを置いた。ミルフィは問うようにユージンを見つめる。
 ルシアスに少し腹を立てていた。ユージンはそんなミルフィの心情を知ってか知らずか、笑った。

「ミルフィ、今は取り敢えず着替えてこい。寝巻きのままだぞ。朝食が済んだら、少し外で遊んでこい」
「え……」

 今度こそ、ミルフィは完全に腹を立てた。

忘却の姫子