レゼナが咲いた日
どこかで聞き覚えのある名称だと思ったとき、今度はハウエルが身を乗り出した。
「そうか。セレスティア王国。ミルフィほら、昔に世界史の授業で習ったじゃないか」
そう言われてミルフィも思い出した。
「そうじゃ。かのレイズヴァーグに滅ぼされた東の王国じゃよ。青のセレスティア。レゼナを冠する青の民。セレスティアはの、レゼナ発祥の地なのじゃ」
「レゼナ発祥の地……」
初耳だったその事実に、ミルフィとハウエルは感心してため息をついた。そのことは授業では習わなかったのだ。
今から十四年前──東の大陸に位置する小国セレスティアが、レイズヴァーグの侵略により滅びた。王家を失ったセレスティアは、現在はレイズヴァーグの属国となっている。その事実は学校の授業の世界史で習った。
レイズヴァーグは東の大陸の大国である。ウルディアスとは昔から戦が絶えなかった。現在は戦争が終結して平和条約が両大陸で締結され、一応の平和となった。
この百年で両国間の国交が開かれるようになり、人々も自由に行き来が出来るようになったのだが──。
レイズヴァーグは近隣諸国への侵略で、脅威の軍事国家となっていた。
戦争が終結した現在でも、油断は出来ないとの見方が強い。
ミルフィ達には戦争のことは学校の授業の中でしか知らないが、他国では現在も戦争を繰り返しているという。とりわけ隣の大陸のレイズヴァーグは怖い国だとの印象がミルフィは強かった。沢山の国々が乱れ、王が滅ぼされ、民が死んだ。
今は亡きセレスティア王国もそんな戦争の犠牲者だった。
(どうして人間は戦争なんか起こすんだろう……)
ぶるりと身震いをして、ミルフィは自らの身体を両手で抱きしめた。そんなミルフィの肩に、ハウエルがそっと手を添えてきた。気が付かないうちに小さく震えていたのだ。
彼の温かな手のひらは彼女を慰めるかのように、安心させるかのようにそっと触れて離れた。