青の剣士
ミルフィは仰天して、腕に抱えた黒猫を危うく地面に放り投げる所だった。
「今──猫ちゃん喋ったわ!」
ルシアスの顔と猫とを慌てて見比べる。
「亜人種か」
ルシアスは納得したように呟く。その聞き慣れない言葉に首をひねりつつも、ミルフィは急いで休憩所に向かう。
お腹空いた──黒猫の言葉を思い出したのだ。
黒猫をテーブルにそっと寝かせる。しかし黒猫はぐったりとし、瞳を閉じたままだ。
「猫ちゃん、可哀想に」
荷物からお弁当のサンドイッチを取り出して、パンをミルクに浸し、黒猫の口元に近付ける。
「猫ちゃん、食べて」
暫くして、黒猫の耳と髭がピクリと動き、やがて弱々しく体を起こした。
匂いを嗅いでから食べ始める。
ミルフィはホッと胸を撫で下ろした。
ミルクを飲み、パンを食べ終えると──黒猫は「みゃあ」と満足そうに鳴いた。
「ありがとう」
そうして人間の言葉でお礼を言った。円な可愛い大きな瞳でじっとこちらを見つめて来る。
ミルフィはパクパクと口を開け閉めしてから──何度も大きく頷いた。
やはり、幻聴等ではなかった。
猫が人間の言葉を話した。
驚きのあまり、直ぐには言葉が出て来ない。
そんなミルフィの様子に、黒猫は小首を傾げたようだった。
チリンと首元の鈴が小さく鳴る。
「あなたもしかして──あたし達亜人種を知らないの?」
亜人種。ルシアスも言った。
「し、知らないわ」
「亜人種を知らないなんて、随分と世間知らずだわね」
ミルフィは困って傍らのルシアスを見やる。ルシアスは軽く頷いた。
「太古の昔に戯れに神が動物と契って生まれた子が亜人種だとの伝承がある。王立図書館には関連の本がたくさんある」
「そうなのね……知らなかったわ」