ラスナーダ亭
異端児と言うソララに目を丸くしながら、きっと私も異端児だわ、と胸の中で思った。ソララとルシアスは自分よりも遥かに物知りで、世間知らずな私もそう。
アスタは、旧時代のマルテ様式の建造物がちらほらと見受けられた。レゼリュウスにも見られるが、ここ中央広場の周囲の建物達には色濃く残っている。ミルフィはそんな歴史あるマルテ様式の建物達が密接するこの場所が昔から好きだった。
外から来る旅人達は、一度は必ず訪れる。と昔ユージンに聞いた。
有名な風車丘は、この広場から馬車でまた一時間ほどの場所にある。丘の向こうはサウラ海だった。ウルディアス大陸とレイズヴァーグ大陸の国境の広大な海である。
やはり昔に、幼い頃、風車丘からサウラ海をユージンと眺めながら、海は大地の血液だと教えられたのを思い出した。波は体内を絶えず流れる血液の循環と同じ。大地は生きているのだと。
まだ十にも満たない頃だったが、その話はとても好きで、アスタに来ると思い出す。
(なら風は、大地の呼吸かしら、息吹)
繋いだユージンの大きくて温かい手のひらを思い出し、きゅっと胸が痛んだ。泣きそうになり、慌てて強く目を瞑る。
「また泣きそうになってるわね。分かるけど、信じなさいな、今は」
傍らのソララが、姉のように幾分か柔らかな口調でそう言い、舐めていたアイスをこちらに差し出した。ミルフィは受け取り、ソララの優しさに微笑む。彼女はややぶっきらぼうだけど、出会ってから何故か気に入ってくれ、何かと側にいては言葉をくれた。
目的のために旅をしているという彼女は、気まぐれで側にいてくれている。それは分かっているが、ただ純粋に嬉しかった。