忘却の姫子
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ラスナーダ亭 
 その時だ。

「あんた達、誰?」

 ふいに、店の入り口から声がかかった。ミルフィ達はいっせいに振り向く。妙齢の女性だった。

***

 最初は警戒していた女性も、ミルフィ達が怪しい者達ではないと分かると、自らの家へと招いてくれた。ラスナーダ亭のはす向かいにあった。

「確かに一週間ほど前にも、あんた達のように男が訪ねて来たんだよ。そう、あんたの父親だったのかい」
「はい」

 お茶を出されて軽くお礼を告げながら、ミルフィは毅然と頷く。

「あたしは彼をよく知らなかったけど、あの人の裏の仕事を知っていた。だから教えたよ。あの人は、政府からの突然の弾圧で殺されたってね」
「えっ?」

 憎々しげにそう言う女性の内容に、驚く。

「ラスナーダ亭は、昼は普通の酒場だけど、夜は情報屋も裏で兼ねていたからね。危険な情報も幾多数扱っていたんだよ」
「そういうことか」

 それだけで、ルシアスは何かを察したのか、つぶやいた。

「そう、あの人は──ライザは、それで政府から消された……。あたしはライザの幼馴染み。でもライザがどんな情報を掴んでいたのかはあたしには想像もつかないよ。相当やばい何かだったのだろうさ。あの日、あの男、あんたの父親は言っていた。心当たりがあると。それだけ言い残して、さっさといなくなっちまったよ」

忘却の姫子