
沖矢昴という男
「坊やから聞いたんだが、改めて問おう。君は何者だ?」
変声機を切り、赤井さんボイスの赤井さん口調で話しかけられる。
沖矢さんの顔で赤井さん口調とか何だか違和感。
「本から出てきたただの魔女です……」
「あくまでそれを突き通すのかね」
安室さんよりもコナン君よりも赤井さんの視線が一番痛いし冷たいし怖い。
目つき悪いだけはあるね!
ごめんなさいもっと睨んでこないで。
「私は何も言えません、言ったら全てが崩壊してしまう」
「それ程までに君は多くの事を知っている、という事だな」
「そこはご想像にお任せします」
「ホー……」
出た赤井さんホー。生で聞けて嬉しいです。
あ、ごめんなさい煩悩は消します。
赤井さんは必要以上に私には触れてこないし話してもこない。
だから揺さぶられる事も少ないし、心臓も痛くならない。
騎士団の時のテンションに戻れそうだぞ…!よしよし!
安室さんとコナン君相手は複数だったし必要以上に絡まれたりタッチが多かったため騎士団の時の力を発揮できなかったが、今ならばいける。
むしろ絶好調になれる。
私は深く息を吸いこみ、目を閉じた。
目を開けた時、赤井さんの雰囲気が少し鋭くなった。
コナン君からはきっと、私はあまり警戒しなくて大丈夫だと聞いたのだろう。
だから雰囲気があからさまに変わった私に、少しばかり動揺して警戒した、という所だろうか。
「今から警戒したら遅いですよ?沖矢さん」
「君なら俺の本名を知っていると思ったんだが」
「あら、本名なんてあったんですか?初耳ですね?」
「なら何故沖矢昴という名を知っていた?」
「っ……」
「教えてはくれないのか?」
「……あなただけの事ならば」
赤井さん顔が近いよ。
調子取り戻しかけたのに、話す事になっちゃったよ。
ソファに座りながら、お互いの顔を見つめ合う。
赤井さんが机から乗り出してきた事で顔の距離が近くなり、心臓が軽く痛くなる。
赤井さん自身の事を話す程度なら大丈夫だろう。
「……赤井秀一さん……」
「……やはりか……」
私はそこから赤井さんについて知っている事を全て話した。
FBIで組織に潜入していた事、死を偽装して、今は沖矢昴として工藤邸に住んでいる事。
話している間、赤井さんは静かに聞いてくれた。
私はあくまで赤井さんについてしか語れないから、他の人は避けながらつかえつつも話した。
「私が知っている"赤井さん"はこれくらいです」
「随分と知っているな」
「赤井さんは私が作品の中のキャラクターだって知っていますか?」
「あぁ、あの本は以前読んだ」
いきなりの話の切り替えにも素早く対応してくれる。
質問への答えだから、遮られたらどうしようかと思ったけれど、意味を汲み取ってくれた。
さすがだ赤井さん。
それに読んでくれてたんだ。コナン君から聞いた後読んだのかな。何だかすごく嬉しいや。
「君は魔女だったんだな」
「えぇ、なら考えてください赤井さん……。私がある一つの作品のキャラクターならば、その逆もまた然り…ですよ?」
赤井さんの目が驚きからか見開かれる。
あぁ、言っちゃったよ。
「逆……という事は俺は君の世界では……」
「これ以上は何も言えませんし言いません。あなたのご想像にお任せします」
「……あぁ分かった。ところで君の名前は?」
「#name1##name2#です…」
「という事は君は騎士団で闇陣営にスパイしていた#name2#だな?」
「えぇ、これ以上質問はおありですか?」
前の調子を取り戻し、飄々と話す#name2#。その豹変ぶりに少しばかり赤井も驚く。
「あぁ最後に一つ……あの場でうずくまって君は何をしていた?」
「あ……」
「……?」
「どうしましょう赤井さん……私家を無くしてしまったんです……!」
赤井さんに会えた事への喜びやら混乱やらですっかり吹っ飛んでしまったが、私は家が無いのだ。
そうだ忘れてたよ今夜野宿なんだよ。
赤井さんに良い野宿場所知りませんかって聞いたら答えてくれるかな。
「……住むか?」
「へ……?」
「後で坊やに掛け合ってみよう。君の安全性は俺が保証する」
「あ、ありがとうございます……?」
赤井さんと住む事になりました?
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