酒は呑んでも呑まれるな


「コナン君やっぱりやめよう」

「どうして?#name2#さんだって安室さんに誤解されたままは嫌でしょ?」

「そうだけど……そうだけどさ……」


これは苦しい。ポアロの前にコナン君に引きずられてここまで来たけど、やっぱり無理な気がする。
疑われているのをこっちが知っている状態で会いに行くのは何だか気が引けるし、どうやって話したらいいのか分からない。


「大丈夫、僕がついてるから」

「どこのスパダリ発言ですか」

「じゃあ行こう!」

「あっ、コナン君っ……!」


おい待て待て待て待て心の準備が、準備ができてないのに!!ドアを開けるな!!!


「いらっしゃいませ…コナン君と#name2#さんじゃないですか」

「たまたま会ったから一緒に来たんだ!カウンター席でも良い?」

「分かりました。二人共さぁどうぞ」


心做しかコナン君と私に対する視線が違う気がするのですが。
安室さんの私を見つめる視線が冷たい気がする。
そりゃあ仕方が無いでしょうよ。知ってるけど、知ってるけどさあ……やっぱり一番好きな人にそうやって見られるのは辛いなぁ……。

内心ため息をつきながら、私は促されるままカウンター席につく。
今すぐ姿くらましして消え去りたい気持ちを抑えて、安室さんに差し出されたお冷を作り笑顔で受け取る。

何だか心臓が痛い。好きな人に会えたから興奮して嬉しくて痛いんじゃなくて、辛くて、悲しくて冷たくて。

グズグズと棘が心臓に巻きついてるみたいで血が吹き出そうで。

コナン君と楽しそうに会話しているのを横目に、私はお冷の氷を噛み砕いた。


それから少し経って、頼んだあむサンド(友人はホモサンドと言っていた)が運ばれてきた。
密かにすごく食べたかったんだよなぁ。
早速頬張り、咀嚼する。


あぁ美味しい。何だこれ美味しい。これが最後の晩餐でも良いくらい美味しい。何これ安室さんチート過ぎるな美味しいな。
こりゃあ未来のお嫁さんは苦労しないなとあむサンドを堪能していると、隣で座っていたコナン君がこちらを心配そうに見つめていた。


「#name2#さん、さっきからしゃべらないけど大丈夫?気分悪いの?」


おっといけない。安室さんに疑われてリアルSAN値削られてたなんて言えない。その後あむサンドを思いっ切り堪能してたなんて。


「いや、あはは、あむ……ハムサンドが美味しくてつい堪能しちゃってたや……」

「本当?なら良かった……」

「このサンドイッチ、とっても美味しいですね、安室さんすごいです」

「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです」


安室スマイルだけど目の底が笑ってないよ安室さん。めっちゃ探ってきてるのが隠し切れてないよ安室さん。
いや、隠し切れてるんだけど、私が開心術安室さんにかけてるから安室さんの思ってる事が分かるんだ。

猜疑心、不信感、警戒。

分かってはいたけれど、本当に辛いな。
リアルSAN値ゴリゴリ削られる所じゃないなこれは。工藤邸帰ったら沖矢さんに甘えても良いかな。
今晩の夕食はカレーが良いですって言っても良いかな。

そう思っていると段々自分がここにいてはいけない気がしてきた。
近日中に元の世界に戻る術を見つけなければ。


「そういえば#name2#さん」

「……はい?」

「今晩お暇ですか?」

「…………へ?」


いきなりどうした安室さん。
いきなりの質問に拍子抜けてしまった。
隣にいたコナン君も安室さんの考えている事が分からないみたいで、目を見開いている。


「空いていますね?」

「え、え、あ、あの」

「では仕事が終わるまで待っていただけますか?その間頼んだものは僕が持ちますから」

「で、でも悪いです、し」

「大丈夫ですね?」

「あ……はい……喜んで……」


安室さんの笑顔が怖いよ圧力すごい。
圧力鍋よりすごいよ。

コナン君もびっくりして苦笑いの始末である。