
獣の手綱はしっかりと握りましょう
安室さんにポアロまで強制連行されたと思ったら、まさかの沖矢さんがいたよ。いや来たよ。
「おおおおおお沖矢さん!?」
「電話に出ないと思ったらポアロで食事とは……いいご身分ですね?」
表情筋は上がってるのに目が笑ってないよ沖矢さん。
そんな顔しちゃ怖いよ!スマイルスマイル!!
「小馬鹿にしてます?」
「いいいいいえそんな!!滅相もない!!」
「さて#name2#さん、帰りますよ」
「人の事小学生か何かだと思ってます?」
「同じようなものでしょう。昨日日が暮れる前に帰ってきてくださいねと言ったのに……」
「げ……」
そう言えばそんな事言ってたっけな。
沖矢さんの態度があからさま小学生に向けるそれだ。何だかこっちが小馬鹿にされてる気分。
沖矢さんの言う通りにするのが何だか癪で動くのを躊躇ってると、沖矢さんが軽くため息をついた。ごめんなさいね素直じゃなくて。
沖矢さんになるべく視線を合わせずにハムサンドを食べていると、ふと浮遊感が襲った。
「はい……?」
「言う事を聞かない子はこうです」
沖矢さんが、私を俵抱きにした。
私は荷物じゃねぇ。
「言う事を聞かないってなんですか!そもそも聞く気もないですし離してくださいお店の中でこんな!!」
「大丈夫ですよすぐ帰りますから」
大声とまでは行かぬもの、普通の声より大きめな声を出していた私に気づいたのか、安室さんがカウンターまで戻ってきて、思い切り顔を顰めた。
「#name2#さん?」
「あああああ安室さん!!これは、その!」
「大丈夫ですよ。躾のなっていない子猫は回収しますので」
子猫……?Why……?
今子猫って言ったね…?もしかして…
「私の事…?」
「それ以外に誰がいるんですか」
「……」
沖矢さんが私を俵抱きして、それを見ている安室さんがすんごい放送事故並みの顔をしている。何これシュール過ぎる。
私もどうしたら良いのか正直分からない。客の人数は少なくあまり目立たないが、時間の問題だろう。
どうしたらこの状況を切り抜けられるのか。でもその前に持ってるハムサンド食べよう。
あまりにも平和的な考えをしていたら、安室さんが切り出した。
「とりあえずいつまでもそうしているつもりなら帰ってくれませんか……」
「えぇですから今から帰りますので、お気になさらず」
「#name2#さんは残してくださいね?」
いや何で。何で私を残すのさ。
安室さんもう私全部食べ終わったから解放してくれよ。
「私いる必要無くないですか…?」
「あなたが発端でこんな事になったのに呑気な人だ」
「安室さん酷ぇ」
「口が悪いですよ#name2#さん」
「ごめんなさい沖矢さん降ろしてくれると嬉しいな?」
「それはだめですね?」
「やっぱり?」
何だこの問答埒が明かない。
沖矢さんが安室さんと向き合っているから、俵抱きされている私は安室さんの顔は分からない。
私の目の前は壁だ。
私さっきから壁とおしゃべりしてるのかな??だからこんな埒が明かない話なのかな??
しばらく沖矢さんと安室さんが沈黙していると、梓ちゃんの声がした。
私は壁と談笑中だから見えない。
「安室さんー……何してるんですか……?」
「あ、これは……」
「では失礼致しますね」
「え"沖矢さん、まだお会計が」
「支払っておきましたので大丈夫ですよ」
「そういう問題じゃ、あの、安室さん、美味しかったです!!では!!」
では、を言い切る前に沖矢さんにドアを閉められ、梓ちゃんに気を取られていた安室さんは驚愕の表情でこちらを見ていた。そんな顔しなくても。
沖矢さんは私を抱えたまま通りを歩き、人通りの少ない道へと向かっていく。
私はなすがままにされていると、沖矢さんの車に乗せられた。
お互い無言のまま車が走り出した。
空気が重い。非常に重い。
これから尋問が始まるのか。はてさて他にもなにかあるのか。
とりあえず冷や汗が止まりません。
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