
癒しの楽園とレセプション
さて何を着て行こうか。
パーティーに露出はマナーですもんね……となるとベアトップのドレス……?
色は……何色が良いんでしょうか……。
自分の鞄の中にあるドレスを見てみる。自分の目の色に合わせた赤いドレス。
これにしようか……?
というかこれしか無いよね……?
やっとこさ着て行くドレスが決まり、今度は飾りだとアクセサリー類を物色し出す。
すると、
「#name2#さん夕食が……ドレスですか……?」
「あ、沖矢さん!」
左手にお玉を持ってリビングに入ってきた沖矢さん。エプロンが素敵ですね。
沖矢さんは私とドレスを交互に見て、クエスチョンマークを浮かべていた。
そのドレスは?と聞かれたので園子ちゃんに誘われた旨を話してみた。
「ホォー……サクラサクホテルのレセプションですか」
「はい!私もそこに誘われまして、行く事になったんです!」
「それは……僕も着いて行っても良いですか?」
「ふぁ!?」
思わず手に持っていたドレスを手放してしまった。何だと、沖矢さんが、パーティーだと。
「だめですか?」
「いいいいいや、だめじゃないですけど!そうですけど!」
「それじゃあ当日よろしくお願いしますね。ぜひエスコートさせてください?」
うわぁああああ沖矢さんがかっこいいエスコートって!!!
火照り始めた顔を両手で挟み、隠そうと躍起になっていると沖矢さんはかわいらしいと頭を撫でてきた。
沖矢さんが何だか甘いよ優しいよ、何これ怖い。それよりも!
私がレセプションに行くのにすら原作壊しかねないのに、そこに沖矢さんも行くなんて更に原作壊してない?
うーんうーんと眉間に皺を寄せて険しい顔をしていると、沖矢さんにまた頭を撫でられた。
沖矢さんの親指が私の眉間に触れ、優しく皺を撫で付ける。
顔を上げれば、沖矢さんの優しい顔が見えた。
「あなたが何で悩んでいるのかは分かりませんが、ここは現実の世界です。僕達は息をしていて、命がある。その事を知ってくれると嬉しいですね?」
「っ……!」
自分は今まで何と馬鹿な事をしていたのだろうか。
彼らをあくまで漫画のキャラクターの一人として扱い、接していた。
生きていない、虚無の存在として。
だけど今は、今は何故か私はコナンの世界にトリップしてきて、生きている。
キャラクター達は息をしていて、紙面やテレビ越しでは分からなかった仕草や癖、立ち振る舞いが分かった。
彼らは今私の目の前で生きているんだ。
私はこの中の、コナンの世界の中の一人の住人として生きているんだ。
そう思ったら、何故だか眉間の皺が取れ、胸の中のモヤモヤも消え、沖矢さんの暖かい手の温もりだけが残った。
「……ありがとうございます……私は何と馬鹿な事を……」
「分かってくれればそれで良いのです」
良くできましたと頭をまた撫でられる。私子ども扱いされてます…?
胸が暖かくなり、心の中で施錠していた心の鍵が一つ取れた気がした。
「…………ところで#name2#さん?」
「はい?」
「失礼」
さっきまで優しかった沖矢さんが、またあのお説教モードな雰囲気になった。え、嘘私何かしたかな。
肩に手を乗せられ、思わずビクッと肩を揺らしてしまう。
沖矢さんはニコニコとした顔のまま肩に乗せた手を背中まで持っていき、カーディガンを引っ掻いた。
「……?何を」
「取れましたよ」
「っ!?それは!?」
「盗聴器ですね」
パキリと沖矢さんの親指と人差し指で鉄屑と化しつつあるそれは、小型の盗聴器。
持ち歩き型のすぐ相手に取り付けられるようなものだから、簡単な作りなのだろうと沖矢さんは一人呟く。
私は実物を初めて目にする盗聴器に、少し目を輝かせてしまった。
「初めてですか?」
「はい……、魔法使えば盗聴など一発でできますので……そういう類のものは私達は必要なかったんですよ……でも何故私に盗聴器……?」
そう言えば何故、私に盗聴器を仕掛けるのか。
それも誰が。何故、何の目的で。
疑問が尽きずまた眉間に皺を寄せると、沖矢さんの背後が険しくなった。
あれ、沖矢さんにも般若降臨ですか?
「#name2#さん、警戒心を持ちなさいと言いましたよね?」
「え、え、え、そんな!こればっかりは防ぎようもないです!!しかも誰ですか!」
「安室君だろうな」
あ、声が沖矢さんから赤井さんになっちゃったよ。
「あ、安室さんがそんな……でも何で……?」
「君の事が心配だったんじゃないか?……それにしても盗聴とは……仕掛ける彼も彼だが気づかない君も君だぞ……」
「ぐ、うぐぅ……」
「今日起こった出来事は全て大方聞かれていたと思っていた方が良さそうだな」
まさか、そんな。安室さん、盗聴器は止めましょうやあなた病んでる彼氏さんかよ。ちょっとお姉さん君の将来が心配よ。
思わず遠い目をしました。
その後沖矢さんにもっとお説教されました。正座で足が痺れたよ。
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