
パーティーと赤と青とワインと
「……何かごめんなさい……増えちゃって……」
「良いのよ良いのよ!多い方が楽しいでしょ!」
「突然の参加申し訳ありません。ありがとうございます」
「良いのよぅ昴さん!#name2#さんのエスコートよろしくね!」
「任せてください」
私を完全に置いてけぼりにして話し始める沖矢さんと園子ちゃん。
昨日言っていたとおり、沖矢さんは着いてきて、帰されるどころか歓迎される始末だ。
沖矢さんと言ったら、まぁ何と素晴らしくスーツなんか着こなして。
でもシャツの代わりにタートルネックを着ているから、普段の格好と変わらないっちゃ変わらない。
でも着てるものが結構お値段あるものだからか、格好は変わらないのに、何かが変わっている。
オーラか……!?イケメンオーラか……!?くそう何だこれ妙に悔しい……!
眩しい……眩しいぜ……!
「#name2#さん、手を」
「い、いいです!一人で歩けます!」
「ですが昨日ピンヒールは慣れないと独り言言ってませんでしたか?」
「沖矢さんずるい……」
「フフ……さぁどうぞ?」
にこやかに笑う沖矢さんの手を握る。
大きくて少し体温が低くて、まめだらけの素敵な男の人の手。
自分の手で沖矢さんの、赤井さんの手を感じていると思うと急に顔が熱くなった。
おおおおおお沖矢さんの手が私に触れ……触れて……!
意識し出すと思考の連鎖は止まらず、火照った顔は温度を増すばかり。
ホテルの中に入って会場に入るまで、沖矢さんに手を握られていたがそれの事しか考えられなかった。
落ち着け、大丈夫私落ち着こう。
こういう時は深呼吸、深呼吸。
「緊張してます?」
「だ、だって沖矢さん……が……!」
「手だけでそんなになるとは……それ以上したらどうなってしまうか楽しみだな……?」
「っ……!」
耳元でフッと息をかけられながら囁かれ、肩がビクついてしまった。
今日は肌の露出が多い服を着ているから、首筋にも息がかかってもうだめだ。
しかも口調が!!沖矢さんから赤井さんになってるし!!わざとかちくしょうめ!!!
顔だけでなく耳や首まで真っ赤になった私を見て喉を鳴らしながら笑う沖矢さん。
あぁもうかっこいいな。
会場に入った後、園子ちゃん達と別れ私は沖矢さんといる事になった。何故だ。
園子ちゃん達を遠目に沖矢さんと立食をする。さすが一流ホテル、飯が美味い。
沖矢さんと他愛もない会話をして立食を終え、一段落してから飲み物を貰った。
「そう言えば#name2#さん、これを」
「……すまーほ……?」
「スマートフォンですね、前に渡したのにどこかへいってしまったので、また渡しておきますね」
いやあれ渡したというより仕込んだよね……?それよりも……。
「有難いんですけど……私これの使い方分からないんですよ……」
「おやそれは……では簡単にですが教えますね、基本的電話かメールが使えれば良いので」
「は、はい!」
まずここが電源ですね、から始まりここをドラッグすると電話に出れますね、と懇切丁寧に使い方を教えてくれた。歩く取扱説明書だ。
沖矢さんのお陰で電源の入れ方、電話の出方かけ方、簡単なメール打ちを教えてもらった。すごい沖矢さん。
マグルの電化製品系を本格的に使うのは初めてで、思わず目を輝かせてスマートフォンを見てしまう。
ひっくり返したり振ってみたり、楽しい。
「#name2#さんの所は電話などは無かったのですか?」
「大方はふくろう便で済ましますからねぇ……急な用ならば姿あらわしすれば済みますし……」
「便利で良いですねぇ……」
「こんばんは」
沖矢さんの言葉に被せるように発された声。聞き覚えがありすぎるそれに、壊れた人形のようにギギギ……とゆっくり振り返ってしまった。
「あ、安室さん……こんばんは……?」
「こんばんは、どうかされました?」
「こんばんは#name2#さん、素敵なドレスですね。青色ならばもっと綺麗だったのですが……」
「ハ、ハハ……アリガトウゴザイマス……」
沖矢さんの挨拶に対しては完全無視を決め込む安室さん。恐ろしい何この人。
それから私のドレスを褒めるけど、赤色より青色が良いって"赤"井さんだからでしょうね……でも青色が良いって何でだろ……あ、でも。
「青色ならネックレスとピアスは青色ですよ!」
「……!」
「それは嬉しいですね!ぜひそのまま付けててください!」
では!と安室さんは私の頭を髪型を崩さないよう優しく撫でると、爽やかな笑顔でどこかへ行った。一体何なんだあの人。
「何で安室さん青色が良いんでしょうか……」
「まぁ僕の割合の方が大きいからあまり気にしていませんがね」
「割合……?」
「彼の瞳の色、青色でしょう」
「あっ……」
気づけば遅く、また顔に熱が溜まる。
沖矢さんはまた笑って、私の耳元に顔を近づけた。
「男というものは好きな女を自分色に染めたいものだ」
「なっ……!」
「それにネックレスが青色とは……彼の独占欲が増したらどうする」
少し開いた目が細められ、鋭く光る。
その鋭さは刃となり、甘く甘く私を突き刺す。
「どうしてネックレスが独占欲になるんですか……」
逃げ場が無くなって壁際に追い詰められた気持ちになる。
沖矢さんは口調が変わって赤井さんに戻ってしまったようだ。
心臓が痛い。
「首輪代わりになるだろう?全く妬かせてくれる……」
「っ……!」
飲み物取ってきますね、とまた沖矢さんに戻り赤井さんは離れた。
もう何で。
何でこんなに掻き回すのか。
心の中がすごくぐちゃぐちゃで頭の中がスクランブルエッグになりそう。
あぁ、顔が熱い。
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