女王の休息と姫の焦燥


少し大きめな電子音と、人々の賑やかな声。

私達は今、王女の希望でゲームセンターというお店にいるよ。
あれからコナン君達を撒いた後、早速遊びましょう!となって、たまたま通りかかったゲームセンターに王女は目を引かれたようで。
入って入ってとせがむ様子はもうかわいかった。何だあれ天使か。

まぁ分からなくもないよ。
私も魔法界でしばらく暮らしてたからゲームセンターなんてなんのこっちゃだし、名前だけ知っている程度だ。
あー、これは不二子さんに説明欲しいな。










ピロロロ……と軽い電子音と共に、王女がやっているパチンコは三つ同じ数を揃え、大当たりの音が鳴る。
それを見た王女は心底嬉しそうに今まで見たこともなかった明るい笑顔を見せていた。


それにしても……ゲームセンターって……。


「すごい音ですね……」

「あなた、魔女だからこういう所は初めて?」

「初めても何も……名前だけ知ってる程度の知識です……」

「……」

「何ですかその目は。すみませんね魔法界暮らしでしたので分からないのですー」


不二子さんの哀れみの目が何だか癪に触って、あからさまにぶすくれてやる。
不二子さんはやれやれという風に肩を竦めてみせると、丁寧にここがどこなのか、どういう目的で来る人がいるのかなどなど、もういらないよと言うくらい教えてくれた。
もうそれは丁寧に。丁寧に。


不二子さん変な所で細かい……。


「ねぇねぇ!次はあれやりたい!」

「UFOキャッチャー?あれ難しいわよ?」

「いいの!とりあえずやりたいわ!!」

「はいはーい、」


パチンコはもう終わったのか、満足そうな顔で王女が帰ってきた。
今度はUFOキャッチャーというものが気になるみたいで、盛んに不二子さんと私の腕に絡みついている。か、かわいい……!


王女に引っ張られ、私達は何やら大きな箱にたくさんのぬいぐるみが閉じ込められた機械へと来た。
箱の上には大きめのアームが一つあり、さっきの不二子さんの説明に出てきたUFOキャッチャーなのだろうな。


「これ!これ!」


王女は興奮したようにバンバンと箱を叩き、コインを入れるよう不二子さんにせがんでくる。
不二子さんはそんなに強く叩かないのと注意しながらも、優しげな瞳で王女を見ていた。

あーほっこりするなぁ、と私は傍観に徹していると、隣のUFOキャッチャーにもコインを入れ始めた不二子さん。あれ、あなたもやるのですか。不二子さんがUFOキャッチャーとかなんかかわいいですね。分かるよ、そのもふもふのうさぎちゃんぬいぐるみ欲しいもんね。


「不二子さんも頑張ってくださいね!」

「は?あなたもやるのよ?」

「え"」


王女の隣のUFOキャッチャーをぽんぽんと叩き、こっちに来いと促してくる。
え、これはやらないといけないフラグ??私ゲームセンターなんて知らないし触った事もやった事もないよ??

断ろうと不二子さんの顔を見れば、不二子さんはやれと言わんばかりに良い笑顔をこちらに向けてきた。


あ、これやらんといかんやつじゃ。


「し、失礼しまーす……」

「はい、頑張れ」


語尾にハートマークが付くくらいの色っぽい声で応援される。そんな応援いらないからせめて見本を見せて欲しかったな。

王女は早速一体のぬいぐるみをアームで掴んでいた。え、王女すごいね才能あるよ!?

けど掴めた喜びから箱を叩いてしまい、ぽとりとぬいぐるみはアームから外れ落ちていってしまった。


「ちょ、店ー員ー!!今掴んだ!!掴んだー!」

「掴んでその穴に入れないと取った事にならないの」

「え!?そうなの……!?」

「ほらもう一枚あげるから頑張って」

「……!……うん!」


コインを一枚もらい嬉しそうにまたUFOキャッチャーをやり始める王女。
わ、私も見習わなきゃ……!


不二子さんが既にコインを入れたUFOキャッチャーへと向かい、レバーを握る。
上にレバーを傾ければ奥に、下に向ければ前に、左右に向ければその方向にアームは移動するらしい。


それよりもまず欲しいぬいぐるみを決めないといけませんね……。……あ。


箱の中を余すことなく見ると、ぬいぐるみを落とす穴から一番離れた真っ白いうさぎのぬいぐるみが目に入った。
目の色がオッドアイで、左は青、右は赤の目の色だった。

ふと脳裏に赤井さんと安室さんが思い浮かぶ。
赤井さんは赤、安室さんは青。


「欲しい……」

「あらぁオッドアイの子?良いんじゃない?あなたのナイト達の色で……」

「うわぁああ不二子さん!!?不二子さん!!??」


いきなり後ろから声をかけられ、思わずびっくりして飛び上がった。
その拍子で箱に頭をぶつけてしまい、額がジンジン熱くなった。ちくしょう。


「決めたなら早く取っちゃいなさいよぅ、王女様はもう取ったわよ?」

「え、待って王女早い」

「早くしなさーい!次私あれやりたいの!!」

「は、はいかしこまりました!!」


王女の腕の中にはキースと同じ目の色をした、くまのぬいぐるみが抱き締められていた。
満足そうに微笑みながらも急かす王女がかわいい。キースと同じ目の色のぬいぐるみだから嬉しいのかなぁ。恋する乙女だなぁ。
とか思ってたら私もほぼ同じじゃないか。それに男性二人。待って私いつの間に遊び人になったの。
待ってその前に私はあの二人に恋心なんて抱いてない。

レバーを持つ手があからさまガタガタと震えれば、不二子さんが肩を揺らして笑っていた。ちくしょうきっと考えてる事気づかれてる。


「大丈夫よ、恋する乙女なんて好きな人が何人いてもおかしくないわ」

「待って私もう乙女って言われるような年齢じゃない」

「え?あなた十八とかそこら辺じゃないの?」

「待って王女、待って私成人してる。二十歳は過ぎてる。待って王女私を何だと思ってるんですか」

「え……?高校生くらいかと……」


何と。私はそんなに幼く見られていたのか。
レバーを不自然に方ガタガタと揺らしてしまった。
けどすぐに軌道修正させられ、目当てのぬいぐるみのすぐ真下まで到着する。


「はい!そのままアーム落として!」

「は、はい!」

「違うわよそのボタンじゃないそっち!」

「わ、分かりやしたぜ王女!」


その後無事オッドアイのぬいぐるみは取れましたが、私は二人に挟まれてヘロヘロです。
何だあの二人UFOキャッチャーの玄人かよ。