ユリイカ、朝を



そんなこんなで名前は高校の入試とボーダー試験に受かり、事はトントン拍子に進んでいった。

ボーダーに受かったと報告した時の母の表情は、高校受験に合格したよと報告した時よりも明るく幸福に満ちているものだった。
ありがとう、お母さんのお陰だよと一言伝え、名前は自室へと戻る。


部屋の電気を消しベッドに腰掛け、満足さで胸が高鳴る。

電気は消されても名前の目は鮮明に物を見る事ができた。
目の前に置かれた机も、椅子も、閉じられているパソコンもくっきりと。
そして見方を変えれば壁や床すらも透けて見え、下の階で一人コーヒーを飲みながら寛いでいる母の姿も捉える事ができた。




前々から起きているこの現象。
この現象は生前の名前の能力だ。
しかし二度目の人生なのに何故起きるのか。
考えられる事は一つ。名前の目は"生前の名前"の能力を、そのままこの"今の名前"に次元を超えて備わってしまったという事。
目の能力の他に気配を消す絶や身体を強靭にする纏などの四大行も、それっぽい形として名前の身体の中に備わっていた。

それっぽいのと言うと、何となく気配を消せる、何となく身体を強靭にできる。と言った生前は意図してできた事が、"感覚的にできる"に変わってしまったからだ。
それに名前自身今の自分の身体からは念のオーラが感じられず、自分にはもう念が無いのだと理解した。
目の能力と四大行っぽいの、そして生前の記憶が残っている名前は少しばかり優越感なるものに浸っていた。


周りよりも少しだけ有利になれる能力が二つも残ってる……それに生前ではハッカーだったけれど目の能力もあったから、戦闘だって訓練だって血反吐を吐くくらいしたし……私にとって大チャンスですね……?


ニヤニヤと緩む頬を正しながら、ボーダーを勧めてくれた母に大いなる感謝を心の中で述べた。
自分に向きすぎているものを勧めてくれてありがとうございます、と。


一階で寛いでいる母を透視しながら、部屋の中で名前は明日の入隊式の事を脳内に描いていた。



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