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「今日から皆さんのクラスメイトになる、名字名前さんです。名字さんはイギリスに十一年間住んでいたのよ。では名字さん、自己紹介お願い。」




それではい!と素直に自己紹介できませんよ!




あれから連れ去られた名前は、今ある教室に入れられ、自己紹介をさせられている。
イギリスから留学とは何だ。十一年間もイギリスに住んでいたって何だ。



私は十一歳までは日本で暮らしてましたよ!
ホグワーツへの手紙が来てからイギリスに言ったんですよ!!でも十一年間住んでいたっていうのは合ってますね!それらを足した数ぴったりですもの!!



「えー……名字名前です。先程の紹介もありました通り、幼少期からイギリスに住んでいました。ですが見ての通り日本人なので、日本語はご心配なくですよ。ですが最近の日本文化はあまり分かりませんので、突飛な行動をしてしまうかもしれませんが仲良くしてくださると嬉しいです。」




軽く挨拶と自己紹介をして一礼をすれば、これからクラスメイトになる人達から拍手が送られる。
見た所皆真面目そうな顔立ちをしていて、中学生特有のヤンチャさは感じられない。
校舎の大きさや生徒達の反応から見て、名前は私立中学校あたりかなと思った。




「じゃあ名字さんは、あそこの窓際の席で良いかしら?─幸村君、手を挙げてあげて。」

「はい。」




じゃああの幸村君の隣の空席に座ってね。と先程の女性は言い残し、一限目の準備しときなさいね!と教室から出て行ってしまった。

残された名前は混乱しながらも、とりあえずは流れに乗っておこうと未だ手を挙げてくれている男子の隣の席に座る。



「俺、幸村精市。よろしくね名字さん。」

「よろしくお願いします。幸村さんと呼ばせて頂いても?」

「あぁ、構わないよ。」




ねぇ、君って─と幸村が名前に何かを聞こうとした瞬間、教室のドアから幸村ー!と声がかかった。
その途端教室中の女子達はハッと息を飲み、幸村とドアに寄りかかっている男子達に釘付けになった。

名前は何事かと思ったが、女子達の視線を何となく察した。
これはいつかの、教え子の中の一人が浴びていた視線に似ていると。
生き残った男の子。ハリーポッター。
彼はヴォルデモートからの魔法を跳ね除け、生き残った男の子。その事から珍しがられ、盛んに今のような視線を向けられていた。


そう思うとどこの世界に行っても、ハリーのような人達はいるのだなと思わされる。
まだ中学生なのに苦労してるなぁと、名前はどこか他人事のように考えた。実際他人事である。




お声のかかった幸村は、その後ごめんね、と謝罪され廊下へと出て行った。
幸村の近くにいた名前に女子達は厳しい視線を送っていたが、幸村が名前から離れ廊下へ出ると、女子達はそちらへ気を取られ名前の事など忘れたように彼らを追いかけて行ってしまった。




「……。」



ものすごく珍しいものを見ました……。何でしょうかあれは……、花○ですか……?その内赤紙貼られてしまうのですか……?
お重箱のお弁当食べてたら中身の伊勢海老踏み潰されちゃったりするのですかね……?




知らない世界に来た上に、まさに王道少女漫画を見せられているような出来事。
女子達の真ん中を、モーゼのように通る幸村。
その先にはやはり見目麗しい顔立ちの整った男子生徒が二人。



何でしょうあれ。本当にF○の方々みたいですね……。



名前は白目になりそうなのを堪え、近くにいた男子生徒に次の授業は何かと聞き、そのついでに授業を行う教室に案内をしてもらった。



何故ちゃっかり私の分の教科書や筆箱があるんでしょうね……。




この世界の都合の良さに脱帽。


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