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「十五分休憩ー。」

「はい!」



女子達の応援する声の中、男子テニス部は今日も練習に励む。
応援は嬉しいのだが、見つめてくる視線に下心が丸見えで、正直皆良い気はしなかった。


切原なんかはここ最近激しくなる応援に痺れを切らしかけているし、真田も顔を歪ませるのを躊躇なくするようになった。


他に行けば良いのに、何故毎回俺らの所へ来るのだろう。と内心溜息をつきながら、幸村はボール拾いを始めた。

男子テニス部はマネージャーを取っていない。
取っても良いのだが、この状況下だ、マネージャー志望の女子は腐る程出てきそうであるし、その志望理由の大半は下心だろう。

部員達はそのような事は望んでいない。真面目に聡明に誠実に、マネージャーを務めてくれる人を求めているのだ。




「精市、俺もやるぞ。」

「あぁ柳、ありがとう。」




女子達の黄色い声を受けながら、柳と幸村はボール拾いを始めた。
終いには休憩と言ったはずなのに、レギュラー陣が二人に近づきボール拾いをする始末になった。


他の部員達も俺もやるっすと言い出し、結局テニス部員総出でボール拾いをする図が出来上がった。
未だ女子達の声は消えない。



「あいつら、いつまで騒いでるんすか……。」

「こら赤也、そんな事言ったらだめだろぃ。」

「でも丸井先輩……。」

「まぁ、気にしなければ良いじゃないか。」



今更仕方ないよ、と幸村が言えば、皆少々うんざりとはしつつも素直に頷く。




そろそろ練習をしようか。と幸村が声をかけようとした途端。




「兄様のネイキッド、カスタムしてるんですね、格好良いです。」

「でしょー!?まだミラーとかウインカーとか、マフラーくらいしかしてないけどもっとしていくつもりよ!」

「ふふ、兄様専用のバイクですね。」

「今度一緒に乗って海行きましょ海!日本の海私行きたかったの!」

「良いですよ、楽しみです。」




楽しそうに話す女子と男性の声。
しかし男性の方の話し方が、女性のものであった。
固まって話していたレギュラー陣達は、その声のした方に反応してしまう。男性の声で話し方が女性となると、やはり中学生、反応してしまう。



シルバーブロンドの長髪を一つ結びにしたスーツ姿の男性と、立海の制服を着た黒髪の女子。

男性は大型バイクを引き、女子は通学鞄を手に和やかに談笑している。
レギュラー陣達はあの男は何だと男性に気を取られていたが、幸村は女子の方に目が釘付けになった。




「……名字さんだ。」

「?どうした精市。」

「いや、あの女子に見覚えがあっただけだよ。ほら、昼休みに話した転校生の事だよ。」

「……あぁ、名字名前の事か。話したのか?」

「席が隣だったからね、でも挨拶くらいだよ。あっちも反応はそんなでもないし。」

「へぇー珍しい。普通の女子なら幸村君見たら一目惚れで浮き足立つのに。」



幸村の発言に皆驚いたように目を丸くし、柳は僅かに開眼する。
皆面白い事を聞いたとばかりに話に食いつき、幸村の続きを待った。




「それで、どうしたんすか!?幸村部長!」

「それでって……特に何も?」

「まぁ、珍しい女性であったと思うだけで良いでしょう。」




下手に関わって面倒になってもあれでしょう、と柳生が眼鏡を上げながら意見する。
レギュラー陣達は特に女子に好かれている。理由は様々だが、やはり一番は顔が良いだからであろう。
そんな事は嫌でも本人達が自覚済みだからである。



応援の内容も頑張ってだの格好良いだの、下心丸見えの薄汚い欲望が言葉になったものばかり。



女子に良い奴はいないに等しい。
いつかレギュラー陣達はそう考えるようになってしまった。




ボール拾いも終わり休憩が終わる。
練習が再開する頃には、名前達はいなくなっていた。


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