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「じゃあ、部活は料理研究部なのね?」

「はい。一人暮らしというのもありますし、料理技術を磨いていきたいというのもあります。この学校は部活動が多いので、どうせなら自分の好きな事をしたかったのです!」




委員長との仕事も終わり、兄が学校まで迎えに来てくれた。
しかしまだ時間に余裕があったため、校内をブラブラしながらただ今話をしている。



「良いわねぇ、後は何か決めた事とかあるの?」

「そうですね……、あ、後は昨日直してくださったパーゴラの場所を、個人的な溜まり場にしたいんですよね……!」



コソッとまるでイタズラをする子どものような無邪気さで、名前は兄に打ち明けた。
実はこの事は前々から決めていて、今日の朝の内に先生方からの許可は得ている。
先生方は言われるまであそこにパーゴラがある事を知らず、よく見つけたわねぇ好きに使いなさいと言われてしまう始末だった。


僅か転入二日目にして先生方からの信頼を鷲掴んでいるとは名前は露知らず。










「こんな所でよろしいでしょうか……!」

「ワォ、頑張ったわねぇ。」



一面に咲き誇る花の数々。
あの後兄にはそこら辺に座ってもらい、名前は自分の好きなように杖で花々を咲き誇らせたのだ。

赤や白や桃色に緑、青に黒にと色とりどりの花達は一見統一性が全くないが、よく見てみれば綺麗にまとまっている。

マグルの世界にはない魔法界の花も堪らず咲かせてしまったが、これはこれで良いと名前は思った。




ここを本格的な溜まり場にしてしまいましょう……!昔から憧れていたのですよね……!秘密基地……!!




「ここにテーブルやチェアもあったらなかなかじゃないかしら?」

「それは良いですね……!明日先生方に聞いて不必要なものがないか聞いてきます……!」

「花壇も作りましょうよ!ここまで来たならガーデニングよ!」

「良いですね!やっちゃいましょう兄様!!」




それから名前と兄は杖を振り、花壇やら小型の井戸やらと作った。
















所変わり、テニス部。




「あれ真田、今日はやけに機嫌が良いね?」

「む、そうか?」



やけに機嫌が良い真田を見て、不思議に思った幸村が一言。
今日は真田と柳生、柳が委員会の日で、部活に遅れてやってきた。
柳生は変わらずいつも通りだったが、柳と真田は心做しか気分が良さそうだった。

そのため幸村は気になり試しに柳に声をかけてみたが、やはりはぐらかされてしまった。
それならば真田にならばと、再チャレンジをしている。



「まぁ、気分は良い事には良いな……。」

「何かあったの?」




自ら理由を口に出すように仕向けてみるが、気分が良くて高揚しまくっているのか、なかなか真田の口から事情は説明されない。
少しじれったく思ってしまったが、それと同時にそんなにも嬉しい事だったのかとより興味が湧いてしまう。



「委員会でな……、珍しい奴に会ったのだ。素晴らしく優秀……、そして可憐……いや、何でもない……!」

「……?女の子なのかい?」



真田の口から『可憐』というパワーワードが飛び出し、一瞬驚きを隠せなかった幸村。
まさかあの真田が、何事にも対し厳しいあの真田が、『可憐』というワードを使うとは。



「いや!今のは忘れてくれ!俺もどうかしていた……、やはり鍛練が足りぬのか……。む、俺とした事が……たるんどる!」

「女の子なんだね、で、どこのクラスの子なの?」



真田にそこまで言わせる女子。幸村は単純に興味が湧いた。
幸村達は普段周りにいる自分達を取り囲む女子達で、半ば飽き飽きしている。
真田や切原、仁王あたりは、最近は特に女子を毛嫌いしている。フェンス越しに覗く彼女らを見て、切原など舌打ちを隠そうともしなかった。


けれどそんな真田が今、女子に対し『可憐』と言った。
そんな事、みすみす見逃せる訳がないだろう。
部長として幼馴染として、本心はただの好奇心だが、単純に興味がある。




真田がそこまで言わせた子……どんな子なのかな?




「何だ、知らないのか?」

「え?俺が知ってるような子なの?」

「知っているも何も、幸村。お前のクラスの学級委員長補佐がその女子の事だ。」

「え。」





思わぬ所から、発掘。


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