照くんとドライブ

今日の仕事とこれで終わり。皆が帰っていくのを後ろから眺めながら、どうやって帰ろうかな、何処か寄ろうかななんてあれこれ考えてると、不意にとんとんと肩を叩かれた。振り返ると、指がぷすっと頬に刺さった。視線の先で笑っていたのは照くん。

岩本「ひっかかった」

ぷうと頬を膨らませれば、照くんは「ごめんごめん」と言いながら私の頭を撫でた。

岩本「車、乗ってく?」
「いいの?」
岩本「ん。ちょっとドライブしてもいい?」
「大丈夫!」

照くんの運転する車に乗るの久しぶりかも。助手席に座りシートベルトをつける。……あれ? シートベルトが上手く出てこない。引っかかってる?

岩本「出ない? ちょっとごめん」

照くんの体が被さって、シートベルトへと腕が伸びる。なんだか恥ずかしくて目を瞑れば、少ししてカチャリと音がした。目を開くと間近に照くんの顔があって、またなんだか照れくさくなって顔を逸らした。

岩本「どこ行く?」
「何処でも。照くんの気分に任せます」
岩本「んじゃ適当に」

照くんのプレイリストを聴きながら、夜景の中をただひたすらに走る。あてもないドライブってわりと好きだったりする。車持ってないからひとりでは行けないけど。

岩本「何見てんの」

意識してなかったけど、けっこうじっと見てたらしい。照れ笑いを浮かべる照くんに「かっこよくてつい」なんて返すと、彼は少しして無言で私の髪をくしゃくしゃと撫でた。

岩本「恥ずかしいじゃん」
「照くんのそういうとこ可愛いよね」

ふと笑みを漏らせば同じように照くんも笑った。そして赤信号で一時停止するとじっと私の方を見つめてきた。

「何見てんの」

さっきの照くんの言葉をそっくりそのまま返してみた。彼もそれに気付かないわけはなくて、口元が緩むのが見えた。

岩本「奏多が可愛くてつい」

恥ずかしげもなく紡がれた言葉に、信号と入れ替わりで私の方が赤くなる。簡単にさっきまでと立場が逆転してしまった。何食わぬ顔で車を走らせる照くんを見ながら「ずるい」と、小さく呟けば「んー、ふふ」とご機嫌な笑みが漏れ聞こえた。


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