さっくんと同室
ラウール「奏多くんってさあ、いつもホテルひとり部屋だよね」
「あーうん」
そうしないと女だってバレるかもしんないし。なるべく気をつけてるつもり。
ラウール「でも今日は佐久間くんと一緒なんだね」
「え?」
ラウール「え? 佐久間くん言ってたよ?」
マネージャー「あ、ごめん。奏多に言い忘れてた。シングル取れなかったから佐久間の部屋行って。ほんとごめん、キングだから許して」
「え、ベッド1個なの」
マネージャー「本当にごめん」
佐久間「んひひ、よろしくでや〜んす〜!」
ラウール「何かあったらすぐ言ってね! 俺隣の部屋だから!」
「ありがとう……ちなみにラウは誰と一緒なの」
ラウール「俺? めめ」
「そっかそっか」
康二と一緒だったらどうしようかと思ったけど、目黒なら全然大丈夫だね。まあ康二とでも大丈夫だとは思うけど。……たぶん?
佐久間「うおー! キングすげー! でかくない!?」
「でかい」
部屋に移動するなりそのベッドのでかさに圧倒された。
2人で寝ても全然窮屈じゃなさそうな大きめのベッド。康二の家のベッドと同じくらい大きい。
佐久間「んへへ、奏多と一緒に寝れんの嬉しい」
そうストレートに言われると意識してしまう。ぽっと耳に熱を帯びるのを隠すように「お風呂入ってくるね」と逃げた。
心臓が煩く鳴るのを聞こえないふりしてお風呂に入り、備え付けのパジャマに身を包む。こういうホテルのパジャマって何故かいつもワンピースタイプだよね。
佐久間「ん、おかえり〜」
ソファにちょこんと座ってるさっくんが手を振ってくれた。手に握られたスマホでは女の子キャラが戦ってる。プリコネかな。
「ただいま」
佐久間「んじゃ、俺も風呂入ってこよっかな〜」
「ん、いってらっしゃい」
自分だけ布団に入るのもどうかなって思って、とりあえずソファに腰かける。化粧水つけたりとか保湿したりとかそういうのは全部済ませたし、特にやることもないし……。ソファに全身を預けると疲れもあったのか、ついウトウトと睡魔に襲われてしまう。
佐久間「……んふふ、かぁいい」
微睡みの中で、柔らかい声が耳を撫でる。薄く目を開くと、くたりと目を三日月形に歪めて笑うさっくんがいて「おはよぉ」と髪を撫でてくれた。
「ん……、おはよ……、寝てた……」
佐久間「んひひ、知ってる。まだ寝てて大丈夫だよ」
よく見るとさっきまで眠っていたはずのソファが向こうにあって、遅れてここがベッドなんだと理解する。
佐久間「このまま寝ちゃう?」
そんなことを言うさっくんは目と鼻の先にいて、なんでこんな近いの? なんて思って見ると、どうやらさっくんに腕枕されていたみたいで……。思わずベッドの端まで離れてしまった。
佐久間「んは、めっちゃびっくりしてる」
「え、ごめん、ほんと」
佐久間「大丈夫大丈夫! てかそこで寝る? 落っこちない?」
「……もーちょいそっち寄る」
佐久間「腕枕しよっか?」
「大丈夫。シナモン連れてきてるし」
佐久間「んぇ? あ! あいつか!」
メンバーにすらあいつと呼ばれているシナモン。リュックからぴょこんと引っ張り出して連れてきてあげる。
佐久間「んふ、かぁいい」
「可愛いでしょ、シナモン」
佐久間「ん、可愛い。でも奏多も可愛い」
掛けられた言葉に全身の熱が頬に集まっていく。シナモンを抱きかかえたまま立ち尽くす私にさっくんはいつもの笑顔で「おいで」と手を広げた。少しだけ近づくと彼はふっと笑って私の腕を引き寄せた。
佐久間「んはは、奏多顔真っ赤」
けらけらと笑うさっくんに背を向けて頭からシーツを被った。彼はまた少し笑って電気を消した。
佐久間「おやすみ、奏多」
「……ん、おやすみ」