目黒と歯ブラシ
撮影まであと30分を切ったところで、目黒が「あ」と声をもらした。
目黒「やば。歯ブラシ忘れた」
カバンの中をひっくり返しながらそう話す彼に「また?」と声をかける。今週何度目だろう。もう常習犯すぎて笑えてくるレベルだ。
目黒「昨日は持ってきてたよ」
「でも一昨日は忘れてなかった?」
目黒「忘れた」
「だよね」
目黒「買ってきてもらわないと」
「あ、あるよ。新品」
はい、と手渡せば目黒は驚いたように目を瞬かせた。
目黒「え、でも奏多くんのでしょ? 悪いし」
「それ目黒用だから。気にせず使っていいよ」
目黒「俺用?」
「うん。誕生日プレゼントね」
目黒「まだ12月だよ」
「じゃあサンタさんってことで」
目黒「ふは、何それ。でもありがとう」
頭を下げてお礼を言う目黒に「いいよいいよ」と笑いながら、私も洗面台へと向かう。2人並んで歯を磨いて撮影にそなえた。