君と冬の匂い
※目黒視点
冬の匂いがした。
冷たい空気が雑味を消して、
澄んだ匂いを運んでくる。
目が覚める匂い。嫌いじゃない。
「冬の匂いがする」
そう呟いたのは俺じゃない。
奏多くんだ。
寒い寒いと街中の人が
体を縮こまらせてる中で
彼だけが大きく伸びをした。
ラウール「冬の匂い? んー、俺全然分かんない」
俺には分かるよ、
そう言おうとして口を開いた瞬間。
遮るように彼の声が響いた。
「きっと目黒は分かってるよ」
どうしてそう思ったのか。
奏多くんは柔く微笑んで俺を見た。
続けてラウールが俺を見る。
ラウール「めめ分かんの〜?」
「……おう、まあ」
ラウール「歯切れ悪っ! 絶対分かってないよ!」
そう言うラウールの横で奏多くんは
「いつかラウールも気付けるといいね」
と笑った。
俺は、笑えてたかな。
俺と奏多くんだけが
共有しているこの匂いを、
他の誰にも教えたくないって、
少しだけだけど、
そんなふうに思ったから。