阿部ちゃんとコンビニ
今日は7人でYouTubeの撮影なんだけど、有難いことにそれぞれ仕事があったようで今集まってるのは私と阿部ちゃんだけ。まだ時間もあるしそのうちゾロゾロ集まってくるだろうけど。
阿部「奏多、俺コンビニ行くけど何かいる?」
「あ、俺も行く」
じっとしててもたぶんすることなくて寝るのがオチだし。マネージャーさんやスタッフさんに断りを入れ、目深に帽子を被って、目と鼻の先にあるコンビニへと向かった。
「あ、新作出てる」
お菓子の棚へ目を向ければ、新作のチョコが陳列されているのを見つけた。
阿部「チョコ? なんか珍しいね、奏多がチョコ選ぶの」
「これは美味しそうだから。後で照くんと食べようかなって」
阿部「ふーん。俺にも1個ちょうだい?」
「いいけど、阿部ちゃんチョコ好きだっけ?」
阿部「うーん、まあ今そんな気分になったから」
「そう」
気分屋だなあなんて思いながら、これまた新作の紙パックの紅茶も持ってレジへと並ぶ。新作って言葉に弱いなって自覚はあるけど、何でも試してみたくなるのも事実だ。
阿部「これもお会計一緒で」
前に並んでた阿部ちゃんがひょいと私の手からチョコと紅茶を奪ってレジに出す。
「え、いいよ、俺自分で払うから」
阿部「いいからいいから」
そう言って阿部ちゃんは私の分まで支払いを済ませてしまった。
「……あ、ありがとう、荷物持ちます」
阿部「いいよ、俺がしたくてしてんだから。末っ子なんだし甘やかされてなって」
「優しいお兄ちゃんを持って俺は幸せです。好きなだけチョコ食べていいから、ね……!」
阿部「いいの? 全部貰っちゃうよ?」
「え。あ、照くんの分は、残しておいていただけると、有難い…です……!」
阿部「冗談だって」
からかうように笑いながら阿部ちゃんは私の頭をぽんと撫でた。たったそれだけのことなのにくすぐったくて照れくさくて、目深に被った帽子をいっそう深く下げた。