高校の卒業式
着慣れた制服に身を包むのも今日で最後。胸に飾られたバラの飾りは、私たちが今日の主役であると示していた。
「これより、卒業証書授与式を行います」
長い祝辞や先生方の言葉が終わり、校舎の外へ出て小さく息を吐いた。「おめでとう」と家族と喜び合う卒業生を見ると、ちょっとだけ羨ましく思った。私の家族は、卒業式が終わり次第早々に帰ってしまったから。
「奏多ー!」
大声で私の名前を呼んだのは慎太郎だった。卒業証書を片手に走ってきた。でかい男の全力疾走は怖い。あと慎太郎は止まらなそうで怖い。ただ今回は急ブレーキを掛けたみたいに彼はギリギリのところで止まってくれた。
「慎太郎、卒業おめでとう」
森本「あんがと。奏多もおめでと」
「ありがと。なんかあっという間だったね」
森本「んだねー。ま、楽しいことも多かったけどさ」
慎太郎の言う通りだ。大変なこともあったけど、同じくらい楽しいことも沢山あった。
今と同じなんてことはないだろうけど、これから先も、ふと振り返った時に大変だったことよりも楽しかったと思えることの方が多い、そんな生活が続けばいいなと願った。
「あ、いた! 奏多ー!」
しみじみと思い出に浸っている私の耳に届いた大きな声。振り向けば、そこにはSnow Manの皆が立っていた。
「「「奏多、卒業おめでとう!」」」
「え……、え……!? なんで……?」
瞬きが増える。え、嘘、なんでいんの。驚きすぎて声もまともに出なくて、金魚みたいに口がぱくぱくと震えた。
佐久間「んははっ、サプライズ大成功〜!」
阿部「奏多の晴れ姿、見に来たんだよ」
深澤「慎太郎といてくれて助かったわ。見つかんないかと思った」
「暗に俺が小さいって言ってんの?」
深澤「いや、そんなわけじゃなくて!」
渡辺「うゎははははっ」
「翔太くん笑いすぎ」
佐久間「ちっちゃいものクラブいぇーい!」
皆が来た瞬間、空気が変わる。それまでに感じていたセンチメンタルな気分も春の陽気のような明るさへとがらりと変わってしまう。
岩本「慎太郎も卒業おめでと」
森本「あざっす! あ、兄さんたち写真撮ります?」
深澤「ん、お願い」
私を置いて話が進んでいく。びっくりしすぎてまだ頭がついていってない。照くんが私の腕を引いて、真ん中に立たせ、その周りを他の6人が囲むような感じで写真を撮ってもらった。いつの間にかギャラリーみたいなのも出来ててなんか恥ずかしい。さすがジャニーズって感じ。
深澤「てか奏多、ボタンがっつり残ってんね」
「そんなもんじゃない?」
渡辺「樹はブラウスのボタンまでなくなったって言ってたけど」
「それは樹がやばい。何そのモテ自慢」
佐久間「先輩っ! ずっと前から好きでした! ボタンくださいっ!」
ブレザーのボタンは袖部分も合わせて全部で6つ。急にコントを始めるさっくんに「どれがいい?」と聞くと「じゃあこのおへそのとこのボタン」と言われた。ブレザーの第一ボタンになるのかな、これ。
その後、何故かほかの5人からもボタンを強請られてしまい、私の制服のボタンは全部Snow Manの手に渡ることとなった。
「お願いだから売らないでね」
阿部「売らないよ」
「阿部ちゃんは信用してる。心配なのは紫の人」
深澤「俺? 大切にするよ?」
めちゃくちゃキメ顔のふっか。あまりにもキメすぎてて思わず笑ってしまった。
佐久間「そーだ、奏多。この後予定ある?」
「え? ないけど」
佐久間「んじゃ俺らとお出かけ行こ! 卒業旅行ー!」
森本「俺も行きたい!」
渡辺「お前この後仕事だろ!」
森本「なんで知ってんすか!?」
渡辺「樹から聞いた」
しゅんと肩を下げる慎太郎。残念。今度ご飯でも誘ってあげようっと。
佐久間「じゃ、俺ら出かけるから!」
「え、もう?」
阿部「まだ挨拶とかあった?」
「いや、それはないけど」
佐久間「んじゃ、れっつらごー!」
「あ、じゃ、じゃあ慎太郎、またご飯行こうね」
森本「おーう!」
ばいばーいと慎太郎に手を振り、私達は学校を後にした。寂しさも羨ましさももう既になくなっていた。わざわざ休みの日に私の卒業式に来るような大好きな仲間が6人もいるんだって再確認出来たから。