照くんとショッピング

ある日の収録後、その日はもうこの後仕事もなく直帰するだけ。楽屋のあちこちでは「今日飲みに行かないか」とか「溜めてたアニメ見るぞ〜!」とかそれぞれこの後の予定を話していた。そんな中、私はこっそり照くんに近付いて声をかけた。

「照くん、照くん」
岩本「何? てかなんで小声?」
「照くんにお願いがあります」
深澤「何話してんのあそこ」
佐久間「内緒話なんてやらしー」

座ってる照くんの耳元に口を近付けてお願いごとを言えば、ふっかとさっくんも大きな声でひそひそと話すふりをしていた。

岩本「え、全然いいけど」
「本当? ありがとう!」
岩本「んじゃ、行こ。あんま遅くなると店閉まってるかもしんないし」
「うん。じゃ、皆お疲れ様です」
岩本「お疲れ〜」

急いで楽屋を出て照くんと電車を乗り継いで向かった先は東京じゃ知らない人のいない大きなショッピングモール。

岩本「てか俺でよかったの? 阿部とかの方がおしゃれじゃん」
「阿部ちゃんはおしゃれ上級者すぎて俺には無理だな……。着こなせる自信が無い」
岩本「何それ、奏多が言ったら似合うの見繕ってくれそうだけど」

くしゃりと目元を綻ばれる照くんにつられて私も笑ってしまう。照くんのよく行くお店から順にまわって、どれがいいか見たり試着したり、着せ替え人形みたいだけどそれが楽しく思えたりして。

「どう?」
岩本「ん、いいと思う」
「さっきのも好きだったんだけど、どっちがいいかな……」
岩本「んー、どっちかって言ったらさっきの」
「本当? さっきの服の方が良かった?」
岩本「ん、この服はちょっと背伸びしてる感じするし、今の奏多に似合ってたのはさっきのかな」
「じゃあそっちにする。ふふ、明日の撮影で着ようっと」

照くんが似合うって言ってくれた服を買って、今度はタピオカ屋さんに並ぶ。

「はい、照くん。今日は付き合ってくれてありがとう」
岩本「え、いいの?」
「うん。照くんのおかげで沢山服買えたし」
岩本「ありがと」

嬉しそうにタピオカを飲む照くんに思わず笑ってしまう。

岩本「何笑ってんの?」
「ん、いや、照くん美味しそうに飲むなあって」
岩本「美味しいからね」
「たしかに美味しいけど、照くんが飲んでるともっと美味しそうに見える」
岩本「何それ。……飲んでみる? 奏多のと変わんないよ」
「ん、うーん、大丈夫」

何気なく照くんは言うけどそれ、間接ちゅーってやつだからね。私が意識しすぎなのかもしれないけど、でも照れくさいからしない。

岩本「そう? じゃあこれ。あげる」
「へ? 何?」

手のひらにトンと渡されたそれはフープピアスが入った箱で。きょとんとした顔で照くんを見れば自分の耳を指さして「俺のとおそろい。嫌?」と尋ねられた。大きく首を左右に振れば「じゃあ今度の撮影、それも付けてきて」なんて言われてしまった。

「……いいの?」
岩本「え、いいも何も、付けてほしいからあげたんだけど」
「ありがとう、照くん」

無言で私の頭をくしゃくしゃと撫でる照くん。阿部ちゃんもふっかもさっくんも舘様もよく私の頭撫でてくれる。子供扱いされてるような気がしてならないけど、でもそれが嫌なわけではなくて、くすぐったい幸福感が胸の中に満ちていく。


次の日、YouTubeの撮影で現場へ向かえば、ふっかやさっくんから「奏多新しい服じゃん!」「ピアスしてる!」とやんややんや言われて、照くんが遠巻きで笑っていたのに助けてくれなかったことを私は今でも忘れない。


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