「皆様ごきげんよう。だてさまです」
「愛称でーす」
「本日の動画は、貴族のみなとみらいおデートです」
今日の企画は私たちのデートを記録すること。コメントやSNSで『ふたりのデート風景が見たい!』って声が多くて実現したの。
「ちなみに、運転は姫にしていただいてます」
「安全運転です」
「ありがとうございます。あ、ちなみに僕は運転できません」
涼太くん免許持ってないしね。遠出する時はもっぱら私が運転する。お酒飲みたいときとかは泊まりか電車になるけど。
「まず最初の目的地は?」
「横浜中華街に向かってまーす」
「横浜中華街に向かってるそうです。向こうに着く頃にはいい感じにお昼時ですからね」
「帰りにパンダまん買いたいなぁ」
「まだ着いてないのにもう帰りの話?」
くすくす笑う涼太くん。たしかにそれもそうか。でも、中華街行くんなら絶対パンダまん欲しいって思っちゃうんだよね。あとパンダグッズも気になってる。
「愛称、パンダ好きだよね」
「大好き!」
「じゃあ次のデートは動物園にしようか」
「ふふ、だてさまもう次の話?」
「……あ。愛称のが移ったみたい」
今度は私が笑う番。あれこれやりたいことや行ってみたいところが増えてるってのはとっても嬉しいし幸せなことだけど。動物園、上野のパンダちゃんも見たいけど和歌山のパンダちゃんも見たいなぁ。
いつもと変わらないこんな他愛もない会話をしながらドライブを続け目的地へと向かう。PAに車を停めて、中華街へと繰り出す。
「何食べたい?」
「小籠包!」
「だと思ってお店、調べてあります」
「さすがだてさま!」
涼太くんのエスコートで点心のお店へ向かう。小籠包をテイクアウトして座れるところを探していざ実食。幸せすぎる美味しさに目を輝かせた。その後もあちこち見てまわりつつ、お目当てのパンダまんを手に入れて次の場所へと向かう。行先はショッピングモール。お互い服が好きだから、こういうウインドウショッピングは私たちのデートの定番になっている。
「これ愛称に似合うと思う」
「ほんと? 試着してくる」
試着して「わぁ」と小さく息を洩らす。ほんと涼太くんには敵わないなぁ。私が思ってる以上に私を分かってる。彼の見立ててくれたワンピースは自分でも驚くほど合っているように思えた。試着室のカーテンを開けて、彼にお披露目すれば「凄く似合ってるよ、お姫様」と優しく微笑まれた。
「買いすぎかな?」
「良い買い物だと思うよ」
さっきのワンピースも含めて何着か服を買って、涼太くんもジャケットや柄シャツなんかを買って、ショッパー片手に車へと戻る。日も落ちてきたころ、最後に向かったのはLEDで七色に照らされた観覧車だった。
「どうでした、今日のデートは」
「楽しかった! だてさまは?」
「俺も楽しかったよ」
「今度は何しようか」
「そうだね。それはまた、後で話そうか」
向かい合って座っていた観覧車の中、ぎしりと揺れて彼がこちらへ移動する。
「以上、貴族のおデートでした。それでは皆様、ごきげんよう」
「えっ、急だね。ご、ごきげんよう〜」
動画を止めて、涼太くんが私に笑いかける。不意に顔が近づき、唇が重なる。触れた温もりが離れると彼はいつもの大人びた笑みではなく、いたずらっ子のようににやりと笑って「名前」と私の名前を読んだ。
「観覧車のてっぺんで、キスしたかったから」
「えっ、今、一番上だったの」
「そう。これは動画じゃ載せれないからね」
そう言って彼はまた私にキスを落とす。観覧車がおりるまでの数分間、静かに肩を並べてふたりだけの時間を過ごした。