人生初のお仕事。雑誌の表紙を単独で飾る、なんて夢のまた夢だと思っていた。それがこうして叶う日が来るなんて、嬉しい半面、プレッシャーも凄い。
宮舘「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」
今日のカメラマンさんは小柄な女性。聞けば、今その世界で注目されているカメラマンさんらしい。
「最高の表紙にしましょうね」
にっこりというよりは、くしゃりと笑う女性だった。「撮影の前に少しお話しませんか?」と俺の隣に座って話し出す彼女。関西出身なのか時折混じる関西弁が耳に心地好いし、話も上手で思わず笑ってしまう。
宮舘「あはははっ! はぁー……、ふふっ」
「あ、今の顔、めっちゃいいです」
人懐っこい笑みに興味を惹かれた。少し会話が弾んだところで「じゃあこの調子で撮影始めましょうか」と彼女が切り出した。
そこからは空気が一変した。と言っても、彼女が作り上げた朗らかで明るい雰囲気は残したままで、でも決して緩んではいない。
「宮舘さんって兄弟とかいますか?」
宮舘「妹が2人」
「へぇ、お兄ちゃんなんですねぇ」
宮舘「お兄ちゃんです」
「うちにもおにぃが2人いるんですけど、ふふ、2人して変わってて」
そんなふうにずっと話し続ける彼女。おしゃべりな子はあんまり得意じゃないはずなのに、彼女の言葉は何故か嫌じゃなかった。
話している姿はそこらにいそうな普通の女性なのに、彼女のレンズを覗く視線は真剣そのもので、身体の奥がぞくりと反応する。
「ちょっと確認しますねー」
宮舘「はい」
これまでに撮った写真を見ながら彼女は嬉しそうに笑みを浮かべた。後ろから覗けば「おぉ……」と小さく感嘆の声が洩れてしまうほどの写真の数々に圧倒された。写真なのに生きてるような錯覚に襲われる、なんて。
「もう何パターンか撮りたいんですけど……、宮舘さん大丈夫です?」
宮舘「大丈夫です。ぜひ、やりましょう」
「あははっ、心強いです!」
今度は細かく指示が入りながら撮影が行われた。ミリ単位の角度調整や細かな光の入り方等、細部まで拘った撮影に先程まで以上に緊張感が走る。
「はい、これで最後です! ありがとうございます! めっちゃええの撮れた!」
宮舘「ありがとうございました」
くしゃくしゃの笑顔につられて俺まで笑顔になった。なんなら周りのスタッフも緊張感から解放されたのもあってみんな笑っていた。
「宮舘さん!」
宮舘「はい」
「今回の表紙、絶対良いのに仕上げますんで、楽しみにしててください」
宮舘「はい、楽しみにしてます」
「それと、また一緒にお仕事できたら嬉しいです!」
差し出された手をぎゅっと握る。ずっとカメラを握っていた手は少し熱を持っていて、その情熱にまた胸を打たれた。