春雷を待つ

「んん……、はぁい」

スマホの着信音で同時に目を覚ます。電話の相手は康二だった。そして、電話に出たのは名前。

「……康ちゃん? うん? ……え、あっ」

ばっとスマホを渡される。なんだろ、と思ってたけど少しして俺も「あ」と声を洩らす。名前が出たの、俺のスマホだ。

宮舘「もしもし」
向井『え、あ、やっぱだてのスマホやんな? 俺、間違えて名前に掛けたかと思ったわ。てか、え、なんで名前、だてんとこにおんの? え、もしかして……?』

電話越しだけど、きっと康二は凄く困惑していることだろう。まあこんな朝から一緒にいるなんて仕事でもなかなかないだろうから。

宮舘「名前さんと、お付き合いさせてもらってます」
向井『えっ、え!? ほんまに!? うそ、えぇ!?!』

スピーカーにしなくても響く大きな声はどうやら名前にも届いたらしく恥ずかしそうに顔を覆っていた。

向井『え、あ、あー……、だて今日はよ来れる?』
宮舘「うん。そこで改めて話しよう」
向井『いやそれは俺のせりふ!』

その後、ちゃんと要件を話して、康二は早々に電話を切った。照れて布団の中に隠れる名前を抱き寄せて「ごめん。でも、ちゃんと話してくるから」と呟いた。

「わ、私こそ、ごめん、なさい。間違えて、電話とっちゃって」
宮舘「大丈夫。相手、康二だったしね」
「他の人だったらと思うと……」

落ち込む彼女を慰めるようにキスをして、2人分の朝食を用意する。

宮舘「今日も撮影だっけ」
「うん。康ちゃんにも、ごめんねって言っておいてもらえると、ありがたい、です」
宮舘「分かった。伝えておく」

それぞれに着替えて「いってきます」とキスをして、時間差で家を出た。
マネージャーに迎えに来てもらった俺はそのまま車で移動して現場へ入る。

向井「おー、待っとったでー」

もう既に康二は現場入りしていて、楽屋に入るや否や「ここ座りや」と椅子を叩いた。
なんで隣? と思いながらそっと真向かいに座る。

向井「普通ここ座るやん!」
宮舘「いや、やだよ。ここでいいじゃん」
向井「ええけどさぁ」

和やかな雰囲気が一変、康二の顔が以前に名前と3人で食事に行った時の、兄のそれに変わっていく。

向井「……最近なぁ、名前と電話するとよくだての話になっとったんよ。初めてご飯行った日も、いい人やったね〜って言ってて。そんときはまあ、メンバー褒められて嬉しいなぁくらいに思っとったんやけど、そっかぁ……そっかぁ……」
宮舘「改めて言われてもらっていい?」
向井「え、待って。心の準備させて。俺ここで正座していい?」
宮舘「どうぞ」

靴を脱いで椅子の上で正座し始める康二。そわそわして落ち着かないんだろうなぁ。いや、俺もなんだけどさ。

宮舘「いい?」
向井「……お、おう」
宮舘「名前さんとお付き合いさせてもらってます」
向井「お、おぉ」

もう既に泣きそうな顔をする康二。早くない? でもこの涙脆い感じ、名前と一緒だ。嬉しいときに涙を目に浮かべてくしゃりと笑う彼女の姿が頭の奥に浮かんで、今朝別れたばかりなのに早く会いたくなった。

向井「そんだけ? え、てかいつから付き合っとるん?」
宮舘「付き合いだしたのは……半年くらい前かな」
向井「え、俺ら飯行ったんもそんくらい……?」
宮舘「そのくらいだね」
向井「そんくらいから付き合っとんの?」
宮舘「まあ、その後から……ね」

ずい、と康二が身を乗り出してきて「……名前のどこが好き?」って聞いてきた。そういうの、彼氏の口から聞きたがる? 思わず笑ってしまったけど「そうだな……」と言葉を続ける。

宮舘「周りをよく見てるところ。よく喋って、よく笑うところ。笑った顔が可愛いし、見てて癒される。意外と照れ屋で。涙脆いところは康二に似てるよね」

うんうんと頷きながら康二は話を聞いてくれた。そして一通り聞くとくしゃりと笑って「俺が言うのもなんやけど」と呟いた。

向井「俺、名前の恋人とか初めて見るんよ。そういうのは、教えてくれんかったから。だから最初めっちゃびっくりしたんやけど、なんか今はめっちゃ嬉しい。メンバーやからとか、そういうのもあるけど、でも、なんかな……、だてで良かった」

鼻の奥がツンとする。上手く言葉が出てこなかった。

宮舘「ありがとう」

ようやく出てきたのは一番短くてでも何よりも思いが詰まった言葉だった。

向井「また3人でご飯行きたい……」
宮舘「喜んで」
向井「あかん、ほんま嬉しいわ……」

ずっとぐすぐすと鼻をすすっている康二を見てるだけで、名前がどれだけ家族に愛されて育ってきたか分かる気がした。
後から楽屋入りメンバーたちは「舘様が康二泣かせてる!?」なんて騒がれて大変だったけど。