悩みごとを話してみよう

またモヤモヤした日が訪れた。理由は、たぶん名前。だけどなんか上手く答えが出ない。なんでこんな気持ちになんだろ。

阿部「今日は何に悩んでんの?」
佐久間「阿部ちゃん……。あのさぁ、こないだ名前と出かけたんだけどさぁ、それから? 目で追っちゃうんだよね。テレビとかも、録画して見るようになっちゃったし」
阿部「うん」
佐久間「胸の奥? が、きゅーって、なんだよね。……なんだろこれ」
阿部「……佐久間ってさあ、少女漫画とかよく読むんだよね?」
佐久間「うん、読むけど?」
阿部「少女漫画でよくある心情じゃない? それ」

言われてはっとした。……たしかに、少女漫画だと、恋に鈍感なヒロインがずっともやもやしてて、親友に相談して初めて恋だと気づく、みたいな。そう、気付いたら急に顔が赤くなって、指先まで真っ赤に染まっていた。

佐久間「……阿部ちゃん、俺、どうしよ」
阿部「意外とそういうとこ鈍いよね」

楽しそうに笑う阿部ちゃんの横で頭を抱える俺。どうしよ、胸がドキドキして、苦しくなってきた。でも、えっ、でもさぁ、大我の妹だよ? 幼なじみだよ? うわ、少女漫画だったら兄と好きな人との狭間でいろいろあるから絶対楽しいしきゅんきゅんして最高なのに、いざ自分の身なると、どうしようもなくて困ってしまう。

深澤「何してんの?」
阿部「佐久間の恋のお悩み相談室」
深澤「何それ」

けらけら笑うふっかに事情を話せば「少女漫画かよ」と笑われた。

深澤「んで、相手誰?」
佐久間「大我の妹」
深澤「大我!? え、その妹ってことは……、じゃあ女優の京本名前さん?」
佐久間「そー」
深澤「高嶺の花だなー」
阿部「でも幼なじみだからね」
深澤「あーそっか。んじゃ、男として意識してもらえっかが重要なんじゃない? 昔から一緒に遊んでたんなら尚更」
阿部「おー、さすがふっか」

幼なじみのお兄ちゃん。もしかしたらそんな関係で終わってしまうかもしれない。……でも、俺はそんな関係で終わらせたくない。すぐにLINEを開いて『名前、今度ご飯行かない?』って誘ってみた。その突発的な行動を見て、ふっかと阿部ちゃんは楽しそうに笑っていた。

深澤「押せ押せで頑張れ。その方が佐久間っぽいから」
佐久間「……お、おう」
阿部「また進展あったら教えて」

ぽんぽんと2人から肩を叩かれて少しだけ勇気が湧いた。数時間経って名前から『いいよー』とまた二つ返事が返ってきて、それだけで胸の奥がぎゅうと締め付けられて、犬がしっぽを振るみたいにぱたぱたと足が動いた。