ねぇ、この世界が好きですか?

佐久間「あ」
京本「あ」

連名で文書を出して数日。たまたま事務所に立ち寄ったら大我に出くわした。……付き合ってんの、まだ言ってないからちょっと気まずかったりする。

京本「ねえ、さっくん時間ある?」
佐久間「え、あ、おう」

よくYouTubeを撮るスペースへ移動して適当な位置に2人で座る。大我はじーっと俺を見て「なんで言ってくれなかったの」と言葉を紡いだ。

京本「俺、ネットニュースで初めて2人が付き合ってんの知った。てかうちの親も、びっくりしてた。母さんは凄く喜んでたけど」

先に知ってたかった。言葉では言わないけど大我の表情がそう物語っていて「ごめん」とだけ呟いた。

佐久間「いつか言わなきゃなーとは思ってたけど、なんか照れくさいのもあって、後回しになってた。改めて、名前と御付き合いさせてもらってます……!」
京本「うちの娘はやらん!」
佐久間「ええ!?」
京本「って言われる日が来るのかな。楽しみだね」
佐久間「俺も京本名乗っていいの?」
京本「それはだめ。夫婦別姓で」
佐久間「んはは! そこは名前に決めさせてあげてよ!」

緊張した雰囲気が一気に解けて幼なじみのそれに変わる。それから少しだけ名前の話をして、それぞれ仕事へ向かった。
仕事先のテレビ局で彼女の名前を見つけ、ぱっと顔が明るくなる。マネージャーに「まだ時間ある?」と了承を貰って、彼女の楽屋を尋ねる。こんこんこん、とノックすると「はーい」と可愛い声が響く。

佐久間「名前ー?」
「大介くん! こんにちは」
佐久間「こんにちは〜! んふふ、やっと会えた」

ぎゅうっと強く彼女を抱きしめてあげる。先日の騒動のときに抱きしめられなかった分も一緒に。

佐久間「今日さ、大我に会ったよ」
「え? お兄ちゃんに?」
佐久間「うん。んで、付き合ってるってちゃんと言った」
「ん、ありがとう。緊張、したよね?」
佐久間「そりゃもう! うちの娘はやらん! って言われたりしたし」
「ふふ、お父さんの真似かな」
佐久間「正解! 怒られるかなあって思ってたとこもちょっとだけあったけど、全然そんなことなかったのは安心した」
「そっか、良かった」

俺の腕の中で彼女が上目遣いで俺を見つめる。「キスしたい」そう言うよりも早く、身体が動く。

佐久間「大好き、俺、本当に名前が好き」
「私も、大介くんのこと好きだよ」
佐久間「好きなだけ?」
「ふふ、だぁいすき」
佐久間「んはは! かぁわいい!」

髪を撫でて唇を重ねる。楽屋がノックされる音にびっくりして唇を離すと、スタッフさんから「京本さん、よろしいでしょうか?」と声がかかった。
ちょっと困り顔の名前に触れるだけのキスをして「今晩、うち来れる?」なんて約束をして、楽屋を出る。すれ違ったスタッフさんが少しだけ驚いた顔してたのがちょっとだけ笑ってしまう。
仕事頑張ろ。んで、帰ったら今度は誰にも邪魔されずにたっぷりいちゃいちゃしよっと。