いろんな仕事をさせてもらってるけど、やっぱり音楽番組は少しだけ背筋が伸びる。ドラマの現場でもバラエティの現場でもそうなんだけど、でもなんかそれぞれちょっと違うからそれ専用のスイッチが入る感じ。
「よしっ」と小さく呟いて楽屋へ戻ろうとしたら、視線の先に阿部ちゃんの背中を見つけた。
目黒「阿部ちゃん」
そう声を掛けて「あ」と思った。振り返った阿部ちゃんの向こうに女の子がいたから。服装的にたぶんアイドルの人。今日の出演者だと……AKBさんか日向坂さんか……よく分かんないけど。
目黒「ごめん、取り込み中だったね」
阿部「全然。気にしなくていいよ」
いつもの笑顔で阿部ちゃんは話してくれるけど、少しだけ申し訳なかった。すぐそこを立ち去ろうとしたけど、阿部ちゃんが「紹介するよ」って彼女さんを俺の前に連れてきた。
阿部「ほら挨拶して」
「いつも兄がお世話になってます。亮平の妹の名前と言います。よろしくお願いします!」
目黒「目黒蓮です……。え、え? 妹?」
阿部「そう、妹」
阿部ちゃんが足を曲げて名前さんと顔を並べる。名前さんの方がまだ幼いけど、目元とか唇の感じが凄く阿部ちゃんと似てて、本当に兄妹なんだと実感させられた。
阿部「目黒と同い年だよ」
目黒「え、そうなんですか?」
「はい! 97年の早生まれなのも一緒です」
阿部「名前は1月生まれだけどね」
ね、と阿部ちゃんと顔を見合わせて笑う名前さん。なんかふたりとも可愛い。
「あ、私そろそろ行かなきゃだ……! 亮ちゃんたちのパフォーマンス楽しみにしてるね!」
阿部「うん、名前も頑張って」
阿部ちゃんにはピースを、俺には会釈をして楽屋へと帰っていく名前さんの後ろ姿をぼーっと目で追う。少しして「俺らも行こっか」って阿部ちゃんに声を掛けられてはっとした。
MC「日向坂46の皆さんです。よろしくお願いします」
「「「お願いします!!」」」
あ、日向坂さんだったんだ。センターで楽しそうに話をする名前さんを見つけて思わず顔が緩んだ。隣に座る阿部ちゃんもなんだか嬉しそうに見える。MCの人に向けてた彼女の視線が一瞬だけこちらを向いて目が合った。……いやたぶん気の所為。阿部ちゃんを見てたって可能性だってあるし。
MC「日向坂46で『アザトカワイイ』です。どうぞ!」