雑誌の取材と、YouTubeの撮影を終えて家へ帰る。ソファに荷物を置いてシャワーを浴びて一息つく。
目黒「手紙……、なんか読むの緊張すんな」
綺麗に封を開けて便箋を手に取る。ドキドキする胸を抑えながら、文面に目を通していく。彼女は見た目の可愛さに反して、シュッとした綺麗な字を書くことを知った。
『今だから言うけど、実は初めてのお仕事で凄く緊張してたけど、目黒くんの名前を見つけてちょっと安心したんだ。遅くなったけど、ありがとう! 目黒くんは私の恩人です!』
俺、別に何もしてないのに。そう思いながらも、知らず知らずのうちに彼女の助けになってたことが嬉しくてつい笑みが洩れる。ありがとうを言いたいのは俺の方なんだけどな。名前ちゃんの演技力に、明るさに、引っ張られてたと思うから。
『またどこかで一緒にお仕事させていただく日を楽しみにしています!』
そんな文面で締めくくられた手紙。封筒にきちんと閉まって、大事にとっておこう。そう思って封筒を手に取ると、中からひらりと1枚のメモがこぼれ落ちた。
そこには、彼女のLINE IDが記載されていた。
慌ててスマホを取り出して友だち登録をする。んで、勢いに任せてすぐに彼女へメッセージを送った。
『目黒です。手紙読みました。俺も、撮影中、何回も名前ちゃんに助けられてました』
簡素なメッセージを送って数分。日付が変わるぎりぎりに『遅くに失礼します、阿部名前です!』と返事が返ってきた。
『お疲れ様。こっちこそ遅くにごめん』
『ううん、大丈夫。連絡もらえて嬉しいです!』
何話したらいいか迷って『電話出来る?』とちょっと大胆なことを聞いてみる。『ちょっとだけなら』と返事が返ってきたのを見てすぐに電話を掛けた。
目黒「もしもし」
「あ、もしもし。こんばんは、阿部です」
目黒「こんばんは。もう寝るとこだった?」
「そう、ですね。もうすぐ寝ようかなって」
目黒「なんで敬語?」
「だって、なんか電話で目黒くんの声聞くの、緊張する」
目黒「なにそれ。俺は名前ちゃんの声聞けて嬉しいけど」
ぽつりとこぼした言葉は電話の向こうの名前ちゃんにしっかり届いてたらしくて「……私も、だよ」って恥ずかしそうな声が俺に返ってきた。
目黒「今度飯行かない?」
「えっ」
目黒「いや?」
「いや、じゃないよ。でもその……」
言葉を濁す彼女。嫌じゃないけど、だめな理由って言ったらきっと……。
「お互い、ファンがいるから……」
ああやっぱり。そうなるよね。俺も、そこは考えてないわけではない。完全予約制、全室個室の、俺が凄く信頼してる人の店でって思ってた。その話をして「阿部ちゃんも一緒に。……だめ?」って念を押す。
「それなら……!」
目黒「ありがとう。俺のわがままに付き合ってくれて」
「ううん、私こそわがまま言ってごめんね……」
目黒「気にしないで。俺、すっごく楽しみにしてる」
「私も!」
日時はまた阿部ちゃんも含めて3人で決めることにして、その日は電話を切った。「おやすみ」って言い合って電話を切ると、急に部屋が静かに思えてきた。……明日、阿部ちゃんに会ったら話しよ。胸の高鳴りを抑えながらベッドに沈む。夢の中で阿部兄妹に挟まれて、それはそれでなんだか幸せな夢だった。