阿部「久しぶりだね、こうしてご飯来るの」
目黒「そうだね。やべ、緊張してきた」
阿部「なんで? あ、でも俺も彼女とその兄貴とご飯ってのは緊張するかも」
向かいに座る阿部ちゃんが楽しそうに笑う。遅れてきた名前は自然と俺の隣に座る。
阿部「前は俺の隣に座ってくれたのに」
「ふふ、拗ねないでよ」
阿部「名前もついに兄離れかぁ」
しみじみする阿部ちゃんに「お父さんみたい」と笑う名前。
「あのね、亮ちゃん」
名前が言葉を切り出す。テーブルの下で俺の手をぎゅっと握ってきたその手が少しだけ震えてるのを感じてそっと握り返す。
目黒「俺たち、一緒に住もうと思って、ます」
阿部「え? え! そうなんだ!」
わっと喜ぶ阿部ちゃん。そんな彼がふと真剣な顔をして俺を見つめた。
阿部「名前のこと、よろしくお願いします」
目黒「えっ」
「亮ちゃん……!」
阿部「改めてね。……はぁ、なんか俺も緊張した」
目黒「俺ずっと緊張してる」
「え、そうなの?」
目黒「名前だって手震えてたじゃん」
阿部「え、そうなの? あ、手繋いでる。見せつけてくれるなー」
そう言う阿部ちゃんの顔はなんだか凄く優しい顔をしていた。俺たちはお互いの顔を見合わせて顔を緩ませる。
阿部「マンションとかもう決めたの?」
目黒「うん。今朝内見して決めてきた」
セキュリティもしっかりしてるし、外から見えない、芸能人御用達のマンション。けっこうちゃんとしてて2人してびっくりした。名前も気に入ってくれたから、そのまま契約まで済ませたんだよね。
阿部「そうなんだ。引越しとか、何か人手必要ならいつでも行くからね」
「ありがと、亮ちゃん」
阿部「いいよ。今まで手伝いに行けなかったけど、今度からは目黒が住んでるから名前にもちょっと会いやすくなるね」
2人は兄妹だってこと公表してないから、名前の方から家に来るのは断ってたらしい。そういえば、俺が初めて家に行った時に「家に男の人いれるの初めてかも」って言ってたっけ。
「……あ、そうだ。私、2人に言わなきゃいけないことあるんだ」
何か思い出したように彼女が言葉を紡いだ。俺と阿部ちゃんの視線が彼女に集中する。
「私、日向坂を卒業します」
「「えっ」」
「びっくりした? 私もびっくりした」
えへへと笑う名前。「前々から話はあったんだけど、今日卒業コンサートの日が決まったの」って。
「卒業したら、今度は女優として、お仕事させてもらう予定。そんなすぐには忙しくならないと思うけど、ね」
目黒「へえ……」
阿部「そっか……」
「あ、湿っぽい空気にしたかったわけじゃないの。あのね、卒業コンサート、Snow Manの皆さんに、来てもらいたいなぁって思って……だめ、かな……?」
こてん、と首を傾げる名前。あざとい。こういうとこ、やっぱり阿部ちゃんと似てる。
阿部「いいの?」
「最後だからね」
断る理由なんてどこにもなくて。俺らは二つ返事で頷いた。俺たちのほかにも、もちろん御家族の方々とかも呼ぶ予定らしい。……それはそれでちょっと緊張するかも。